中島敦の小説『山月記』に登場する李徴が詠んだ詩を、友人の袁傪は「何処か欠けるところがある」と評しました。
天才李徴の行動を辿り、その欠けていたものとは何だったのかを探ってみましょう。
そこには、天才過ぎたがゆえに人生を狂わせてしまった李徴の悲しい運命が描かれています。
以下は、李徴の発狂後の出来事に関する想像です。
李徴の変貌:発狂と人食い虎
李徴は心の内なる声に導かれ、林の奥深くに入りました。
その後、彼は岩窟に暮らし、小さな動物を食べ、旅人を襲って衣服を奪う生活を始めます。
風貌もみすぼらしく、まるで虎のような姿に変貌し、やがて人々から「人食い虎」と呼ばれるようになりました。
自尊心の強い李徴にとって、このような姿で人前に出ることは到底できませんでした。
運命の再会:李徴と友人袁傪
そんなある日、李徴のいちばんの友人である袁傪が通りかかり、李徴は彼を襲いかけます。
しかし、相手が袁傪だと気づいた瞬間、李徴は驚いて草むらに身を隠しました。
しかし、「あぶないところだった」と漏らした声が袁傪に聞かれ、袁傪が呼びかけました。
李徴は、自らの悲しい状況を隠しつつ、友の前に「人食い虎」として現れることを決意します。
友袁傪との語らい:心優しき友情
李徴は虎の姿であることを告白し、その理由を袁傪に説明します。
袁傪はその話を疑うことなく受け入れ、李徴の苦しみや悲しみを聞きます。
友人として、李徴の変わり果てた姿を受け入れ、彼の心の声に耳を傾ける姿が印象的です。
詩と欠けた才能:袁傪が感じたもの
李徴は袁傪に、自らの詩を伝録してほしいと頼みます。
李徴の詩は格調高く、天才的な才気が感じられるものでしたが、袁傪は「第一流の作品になるには、何処か欠けるところがある」と感じます。
その欠けているものとは一体何だったのでしょうか?
欠けていたものが満ちる瞬間
李徴は袁傪に今の心情を詩にして伝えました。
天才詩人でありながら、虎となった李徴の苦しみが込められた詩は、袁傪たち一行の心を動かしました。
人々は奇異な現実を忘れ、李徴の薄幸に同情し、涙しました。臆病な自尊心の壁を越え、李徴の心が人々の前に現れた瞬間でした。
友との別れと李徴の最後の願い
夜明けが近づき、友との再会も終わりの時が訪れます。
李徴は、残された家族のことを袁傪に頼み、再びこの道を通らないようにお願いしました。
袁傪たちが遠く丘の上にたどり着いたとき、李徴は最後の別れとして虎の声を送りました。それは、彼の尊大な羞恥心が残した最後の挨拶でした。