「影響力の武器」という本はたくさんの人に読まれている、とても有名な本ですね。
ここには社会心理学で出てくるような人間の行動の隠れた動機の話がたくさん書かれています。
その中で、
「コミットメントと
一貫性」
という章があります。
これは一度態度を表明してしまうと、その後もその態度とおなじ一貫した行動をとってしまうという、人の習性のことです。
他人に意図的に行わせると
ローボール・テクニック
という技術にもなるのですが、
ドラマ「グッドワイフ」の第8回では、意図的ではなかったものの、
思いがけず、偶然のローボール・テクニックに翻弄されてしまった夫婦がいました。
彼女とあなたとの間には、何もなかった!
収賄容疑で起訴されてしまった夫蓮見壮一郎を、弁護士の妻杏子が弁護をします。
夫は収賄容疑に関しては一貫して否認するのですが、
そのスキャンダルの最中の「不倫疑惑」は認めてしまいました。
この
「不倫」
がきっかけで、夫婦関係が冷え始めます。
夫婦間での、溜まっていた思いのぶつかり合いも始まっていました。
夫壮一郎の部屋に妻杏子が自分の服を取りに入ってきます。
ノック
夫
どうぞ
妻
服を取りに来ただけ
夫
ありがとう
子どもの前では明るくしてくれて
妻
あなたのためじゃないから
・ ・ ・
同じ家に同居していながら、もはや気持ちは離れてしまっているようでした。
ところが妻杏子が弁護のための調査をしている中で、思いがけない事実をつかんでしまいました。
夫は実は
不倫はしていなかった!
という事実でした。
ある人物が夫をスキャンダルに巻き込むため、女性にハニートラップを仕掛けさせ、
薬で不倫があったと夫に思い込ませたとのことでした。
ここで、
不倫はなかったのだから
夫婦の関係は元に戻るか?
という疑問が湧きましたが、結果は
元には戻らない
ようでした。
妻も会社の同僚に
同僚
何もなかったんですか?
妻
どう思えばいいか
分からなかった
ここまで来るのに 色々ありすぎて
何もなかったから
今までどおり とか
そう簡単にはいかないね
夫も 嬉しそうな顔もしないし
同僚
すぐには無理ですよ
お互い 見せたくない顔も
見せ合ってきましたし
・ ・ ・
一度何らかの態度をとってしまうと、一貫した態度を見せなければという圧力がかかってしまいます。
なかなか元に戻ることは容易じゃないようですね。
ローボール・テクニック
ローボール・テクニックはこの「一貫性の原理」を応用した技術です。
「影響力の武器」という本の中で紹介された、このローボール・テクニックの実験は、
次のような内容です。
アメリカのある地域内の家庭に
天然ガスの節約をお願いしました
条件として、節約できた家庭は
「公共精神にあふれた家庭」として
「新聞に名前が載る」ということです
1か月後には
素晴らしい効果が表れました
ところが、
「新聞に名前が載る」という約束は
事情により無くなりました
ここで、はて、新聞に載るという約束が無くなったので、
天然ガスの節約も
なくなったでしょうか?
ということだったのですが、結果は
さらに節約をするようになった!!!
ということでした。
いちど「公共精神にあふれた家庭」としての行動をとった以上、
一貫性の原理で、元のガスの無駄使いには戻れなくなっていた、ということでした。
さらに面白いことに、「新聞に名前が載る」という条件が無くなったことで、
誰かにやらされている
から
自分の意思で節約している
という変化のため、今まで以上に節約をすることになったのだ、という解説もありました。
一貫性の原理
ドラマ「グッドワイフ」の中で、夫壮一郎が、自分を貶めた政治家南原と
少年野球を見ながら会話をします。
南原
ストライク!
ストライクか
この審判は 低めが広いんだなあ
夫
一度ストライクにしたら
間違ったと思っても
そのコースは ずっとストライクに
せざるを得ない
あなたも
同じことを続けるつもりですか?
この辺で
試合を中止にしたらどうです!
自分の、間違った一貫性に気づいたとき、「試合を中止にする」勇気が持てたら
きっと強い人間になれるのかもしれません。
グッドワイフの壮一郎と杏子の夫婦も、元には戻らないとしても、
新たな よい関係を築き上げる
ということは十分可能なんだろうと感じます。
おわりに
ところで、この「一貫性」は人間の共通の本能なのでしょうか。
本能ならば、進化の中で何らかの役に立ったはずです。
きっと、この
一貫性
は
他者への信頼
のための大切な要素だったのだろうと思います。
そして、よく
褒めて育てる
と言われますが、これは「一貫性の原理」の素晴らしい活用例のように感じます。