ミルトン・エリクソンの催眠誘導

アメリカの精神科医にミルトン・エリクソンという人がいましたが、催眠が天才的に上手でした。

でもエリクソンが使った催眠は普通の催眠とは違っていて、「さぁ、あなたは眠くなる」みたいなことはしませんでした。

その抜群の人間観察力の能力をいかんなく発揮して、ごく自然に相手を催眠状態(トランス)に入れていました。

  (ミルトン・エリクソンという人)

その催眠は、ごく普通の会話の中から生まれ、エリクソンと一緒に仕事をしていた仲間が、「彼と話していると不思議な気持ちになる」と言っているほどでした。

どうやらエリクソンという人は、普通の話の中にも知らず知らずのうちに催眠の要素が入ってしまっているようでした。

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会話の中で何が催眠の効果があるのか

たとえばエリクソンが友人に話をした時、その友人はエリクソンの話を面白いと思ったということがありました。

でもその友人はエリクソンがしたその話に、もともとはあまり興味を持っていなかったはずでした。

ところがエリクソンが話終わった時は、とても面白いと思って聞いていたとのことでした。

そしてこの後、友人が何故この話を面白いと思ったのかの種明かしを、エリクソンがしたのですが、

  話す直前に、エリクソンは友人に

  「君は面白いと思うだろう」

さりげないこの一言のおかげで友人は鮮やかに暗示にかかってしまい、その後のエリクソンの話を面白いと思ってしまった、とのことでした。

もちろん、エリクソンと友人との間に信頼関係が結ばれていたということも、重要な要素のひとつではあったことでしょう。

また、エリクソンは人間の「習慣」というものをとても大きな力として見ていました。

この「習慣」とは、無意識のうちに行ってしまう自動的な行動のことで、人間の行動の大半はこの「習慣」によって行われています。

エリクソンは、たとえばとてもひどい生理痛で困っている女性が「生理は規則正しく朝にある」と語った時、

  「あなたが予想していた前の日に
   始まったら、どう思いますか?」

  「朝でなくて夜にきたら
   どんなふうに思いますか?」

という感じで「規則正しく朝にある」という習慣を、相手にとって知らず知らずのうちに壊していきます。

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そうすると生理が予想外の時期にくることを想像することになり、それはあまり痛くないことにつながります。予期した時期にくるのでとても痛いと感じるわけです。

  (予期する痛みと忘れること)

もちろんエリクソンはこの質問の前に伏線として、女性にとってちょっと気になってしまう質問をして、ここでの本題とも言える質問から女性の注意をそらしてしまっています。(エリクソンは「いくつナプキンを使いますか?」と質問していました)

この聞く人の注意をそらすというやり方は、例えば誰かのスピーチの前に司会者が

  「この先生の穏やかな話声に
    ご注目ください」

みたいな紹介をすると、聴衆の注意がずらされてしまい、結果スピーチの内容が素直に聴衆の心に入って行きやすくなる、という理屈と同じようなものなんでしょう。

ところで、「予期する痛み」に関して、以前NHKのテレビの番組で腰痛体操のことを話していたことがありました。(NHKスペシャル)

そこでは、「大半の腰痛は3ヶ月で治る」そして、「以後続く痛みは脳の勘違い」ということでした。

これも話は似ているように思えます。ある時の「強烈な腰の痛み」を経験した人にとって、腰の痛みはトラウマにも感じられるほどです。
その結果、

  体をこう動かすと
  また強烈な痛みがくる

という思い込みがその後の痛みを予期してしまい、本物の痛みとなってしまうのですが、その番組での対策の紹介の中に

  腰痛体操

がありました。ですがこの体操の本当の目的は

  「ほら、痛くないでしょう!
   動いても大丈夫だよね!」

ということを脳に少しずつ教えることでした。

その結果、

  「あ、こうやっても
   痛くはないんだ!」

と脳が理解した時に腰痛が治っている、という話でした。

その他にも、印象的なエリクソンの催眠技術はたくさんありますが、人間の「習慣」をうまく利用した方法に、

  「Yesセット」

というのがありますが、これは相手に「Yes」と答えざるを得ない質問を続けることで「Yes」と答える習慣ができた後、狙った質問にも「Yes」と答えさせることで催眠に誘導するという方法です。

反対にいちど「No」と答えた人には[No]と答え続けさせたりという方法などもありました。

参考

  (ダイエット・逆転の発想)

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