これは小さなモミの木に訪れた、すばらしいクリスマスプレゼントのお話です。
モミの木が
人間みたいに考えるって？
なんて言わないで、
もしかしたら「フィンドホーンの奇跡」みたいに、人間には見えない力が働いて、
モミの木も考えていた、なんてあるのかもしれません。
そしてそんなモミの木にも、
自分も誰かの役にたちたい
子どもたちの笑顔に囲まれたい
なんていう思いがあったとしたら、そんな
「ぼくも
クリスマスツリーになりたい」
と願ったモミの木に訪れた、すてきなクリスマスプレゼントのお話しです。
これは、中村妙子さんの訳を参考にさせて頂きました。
クリスマスイブのこと
その年は大きくて丈夫な木が、家やテーブルを作るためにたくさん使われていました。
でもクリスマスツリーにはあまり使われなかったようでした。
森の中の小さなモミの木は
ぼくも兄さんのように
クリスマスツリーになりたいな
と思っていました。
なぜって、クリスマスツリーになれたら、だん炉のあかりの前できれいなかざりをつけてもらって、
きらきら輝くことができるのです。
そしてその周りでは子どもたちも楽しくおどっていることでしょう。
そんなことを考えて、小さなモミの木はため息をついてしまいました。
そのときです、小さなモミの木がいっぱいに広げた枝に、白い星がどんどんおりてきてとまったのでした。
枝という枝にどんどんとまったのは、白い雪でした。
それはおもちゃの星なんかよりずっとずっときれいな雪の星でした。
でも小さなモミの木は、まだ何かが足りないと感じていました。
兄さんがいるところは
クリスマスのチャイムも聞こえて
もっとすてきなところにちがいない
そんな風に思っていると、その日はとても寒い日だったので、
モミの木の枝には固いつららが何本もぶらさがったのでした。
そして風が吹くたびにつらら同士がぶつかって、
やさしいクリスマスの音楽の調べが奏でられたのでした。
でも小さなモミの木は、まだ足りないと感じていました。
兄さんは美しく
輝いているに違いない
そんな風に思っていると、くらい闇の中から本ものの星が現れて、モミの木の枝に光の雨を降らせたのでした。
中には木のてっぺんにとまってしまった星もありました。
星はクリスマスのふしぎな喜びにあふれた光にかがやき、まるで百本ものロウソクに火がともされたみたいにかがやきました。
でも小さなモミの木は、まだクリスマスツリーとは言えない、と思っていました。
枝のひとつひとつに
贈り物をつるしたい
でも贈り物なんて、この森の中にはどこをさがしてもありません。
小さなモミの木も、贈り物だけはむりだろうと思っていました。
そしてクリスマスの朝
ところがその時、小さなモミの木の根元にあった巣から、子ネズミたちが飛び出してきたのです。
子ネズミたちはおなかを空かせていました。
見ると、モミの木の枝にひと房の実がなっていました。
モミの木の枝にからんだつるが、赤いきれいな実をいっぱいに実らせていたのでした。
子ネズミにはとてもすばらしいクリスマスプレゼントになりました。
少しすると、こんどはリスがやってきました。
小さなモミの木には、冬のはげしい風にも負けず落とされずがんばった実が、たくさんついていたのです。
リスにとってはすばらしいクリスマスのプレゼントでした。
そうしているうちに突然
「クリスマスおめでとう」
という子どもたちの声が聞こえてきました。
子どもたちは、小さなふくろに赤いリボンをつけて、小さなモミの木の枝につけて上の方を見上げました。
小さなモミの木の上の方の枝の間にあった去年の巣から、一羽のユキホオジロが出てきて、小さな袋をつつきました。
ふくろの中にはユキホオジロが好きなこくもつが入っていたのでした。
小さなモミの木が、からっぽのユキホオジロの巣を守っていてくれたおかげで、
ユキホオジロは枝のゆりかごの中でクリスマスを迎えることができたのでした。
願いがみんなかなって
こうして小さなモミの木が願ったことがみんな本当のことになったのでした。
小さなモミの木にとっては、すばらしいクリスマスになったのでした。
そして大きくなったら、人の家をたてるためのりっぱな木になることでしょう。
参考
クリスマスローズの伝説
クリスマスキャロル、スクルージの性格を知ろう
クリスマスキャロル、スクルージ改心の理由は
クリスマスキャロル、あらすじと背景
クリスマスキャロル、三人の精霊が伝えたかったこと
賢者の贈り物の賢者の意味を知る
三十四丁目の奇跡1947
クリスマスの奇跡
ベツレヘムの夜
誰が鐘をならしたか
クリスマスツリーの願い
セント・ニコラスの話