クリスマスの物語、誰が鐘をならしたか

世界各地で語り継がれたクリスマスの物語には、こころ温まる物語がたくさんあります。

この「誰が鐘をならしたか」も、そんな物語の中のひとつです。

ヨーロッパには教会がたくさんあります。そしてその教会からは鐘の音が聞こえてきます。

ところで昔は、この鐘の音が聞こえる範囲がひとつの町や村の範囲だったそうです。

それだけ鐘の音は大切なものだったんですね。

ところがある教会ではなぜか鐘の音が長い間なることがなくなってしまいました。

イエス様への贈り物として、値打のあるものが祭壇に置かれた時になる、という言い伝えがあるこの鐘。

どうしてならないのか、みんなが不思議に思っていた時のことでした。

これは、中村妙子さんの訳を参考にさせて頂きました。

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教会の鐘の音

むかし、ある町の丘の上に大きな教会がありました。

とっても大きな教会で、協会の一方のはしからもう一方のはしがかすんで見えてしまうほどでした。

そして、その教会にあるオルガンの音は遠くの家まで響き、オルガンがなり始めると、

中にはかみなりがなったのかと思って、ビックリして窓を閉めようとする人までいたほどでした。

教会のはしの方には、これまたとても高い塔が立っていましたが、

高すぎて、てっぺんがよく見えませんでした。

でも、そのてっぺんにはクリスマスのチャイムをならす鐘があるということは、みんな知っていたのでした。

ただ、その鐘がなったのを聞いた人は、もう誰もいません。

その鐘は、

  クリスマスイブに、

  イエス様への誕生日の贈り物として

  ねうちのあるものが贈られた時になるのだ

と信じられていました。

みんながイエス様に心のこもった贈り物をしなくなったから、鐘がならなくなってしまったのだ、とみんなは思っていました。

その教会から遠くはなれたところに、ペドロという男の子とその弟が住んでいました。

その家は教会からは遠かったので、教会の塔がかすかに見えるだけでした。

ペドロは鐘のことは知らなかったのですが、クリスマスイブのすばらしい礼拝の様子や、

聖歌隊のきれいな歌声のことなどは聞いて知っていたので、いちどは行ってみたいと思っていました。

  「赤ちゃんのイエス様が

   天から下りてくるかもしれない」

などと、とても楽しみにしていましたが、ある年のクリスマスの前の日に、

とうとう教会にいくことにし、弟といっしょに出かけました。

その日は雪の降る寒い日で、積もった雪に足をとられながらも、

日が暮れる前に、何とか城へきの門の前までたどり着いたのでした。

ところがその時、道ばたに女の人が寝ていることにペドロが気づきました。

女の人は、遠くから歩いてきて、寒さと疲れで雪をまくらにして眠ってしまったのでした。

ペドロがゆり起こそうとしても、女の人は眠ったまま目を開けませんでした。

この人を助けなきゃ

ペドロは弟に

  ぼくはこの人を助けるから、
  教会へはおまえがひとりで
  行ってきなさい

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と言いました。

  この人は、まるでマリア様のようだ

  このままだと死んでしまう
  みんな教会に行ってしまって、
  人も通らない

と言って、あんなに行きたがっていた教会の礼拝に行くことをとうとう諦めました。

背中をこすってあったかくしてあげる、そしてポケットにあるパンくずを食べさせてあげるんだ、と言っていっしょうけんめい助けようとしました。

弟は初めはひとりで行くのはいやだと言っていたのですが、

  礼拝のようすをよく見て
  よく聞いてきてくれ

とペドロに言われて、ひとりで行ったのでした。

そしてペドロからは

  誰も見ていないときに
  祭壇にこの銅貨を置いてきなさい

といって、銅貨を1枚預っていたのでした。

教会の中では、オルガンに合わせて聖歌隊が、城へきも割れんばかりの大きさで歌っていました。

そして礼拝の終わりには、イエス様への贈り物を贈るための人々が行列ができていました。

たくさんのお金持ちたちが、宝石だったり金だったりを持って、

あるいは学者が何年もかかって書き上げた本を持って、次々と祭壇に近づいて行きました。

そして王様が宝石でできたかんむりを持って祭壇に近づくと、まわりからは驚きの声があがりました。

  こんどこそ鐘がなる

みんながそう思ってしーんと静まったのですが、やっぱり鐘がなることはありませんでした。

「鐘なんか本当はならないんじゃないか」などと思う人もいました。

ところが、聖歌隊が最後の讃美歌を歌ったとき、オルガンの音が突然やんだのです。

オルガンを弾く人が、歳をとった牧師さんの方をじっと見ていました。

一瞬

  し~ん

と静まり返ると、チャイムがなっている音が確かに聞こえてきました。

みんなが不思議がって祭壇の方に目を向けると、

ペドロの弟が祭壇の片すみに銀貨をそっと置いたところでした。

参考

  クリスマスローズの伝説
  クリスマスキャロル、スクルージの性格を知ろう
  クリスマスキャロル、スクルージ改心の理由は
  クリスマスキャロル、あらすじと背景
  クリスマスキャロル、三人の精霊が伝えたかったこと
  賢者の贈り物の賢者の意味を知る
  三十四丁目の奇跡1947
  クリスマスの奇跡
  ベツレヘムの夜
  誰が鐘をならしたか
クリスマスツリーの願い

  セント・ニコラスの話

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