1947年映画の
三十四丁目の奇跡
で起きた「本当の奇跡」とは何だったんでしょうか。
(ネタバレあります・注意 また、リメイク版もありますがこれは1947年版の話です)
とは言ってもこれは映画・物語なので、細かいところを突いていけば奇跡がたくさん起きたようにも見えてしまいます。
例えば今の日本で
「私は鬼退治をした桃太郎だ!」
と言ったら裁判にかけられてしまうんでしょうか。ありえませんよね。ちょっと”おかしい人”と思われるだけです。
「私はサンタクロースだ」と主張したクリス・クリングル氏の場合も、そのことで裁判にかけられるというのは普通あり得ません。
病院に強制収監させられるためには、クリス・クリングル氏が
凶暴で危険だ
ということを検事側が立証する必要があるわけで、クリス・クリングル氏がサンタクロースだということを弁護側が立証する必要がある、ということには普通ならないでしょう。
でもこれは映画・物語であり、テーマが「サンタクロースとクリスマス」なので、
クリス・クリングル氏が
サンタクロースなのかどうか
が裁判になっても普通の流れです。特に不思議はありません。
じゃあ、いったい何がこの映画の中で「奇跡」だったんでしょうか?
三十四丁目の奇跡の「奇跡」を探る
「子供に嘘を教えることはよくない
サンタのような架空の存在を
信じさせることもよくない」
と言って、子供におとぎ話も童話も一切話さない母親ドリス・ウォーカーと、そのおかげでおとぎ話を知らず、サンタクロースも信じない女の子スーザンの母娘がいました。
そして、母親ドリスに恋する若手弁護士のフレッド・ゲーリーが、この母娘におとぎ話の世界の夢を教えてあげようとします。
一方、クリスマスの精神が失われようとしていることを嘆き、何とかしたいとニューヨークに出てきた、「自称サンタクロース」のクリス・クリングル氏も、サンタクロースの世界をこの母娘に教えてあげようとします。
そしてクリスマスの精神から対極の立場にいるこの母娘の、その母親に向かってクリスの言葉、
この50年
クリスマス精神が失われた
クリスマスは”日”ではなく気持ちだ
君たち母娘は、そのテストケースだ
君らは時代の典型 君らに勝てれば望みあり
ダメなら私は引退しよう
と言いました。これがポイントなんでしょう。
裁判になったことや、大量の手紙が届いたことや、裁判の結果など、現実の世界での話なら奇跡にも思えそうなことも、物語の中では奇跡ではありません。
この物語の中での「本当の奇跡」は
「裏庭とブランコのある本物の家が
クリスマスプレゼントとして
スーザンのもとに届けられた」
ということです。
そして、この奇跡は
起きた
のではなく
起こした!
のです。
そして、奇跡を起こしたその人、主役はもちろん
クリス・クリングル
(サンタクロース)
です。
クリスマスの奇跡を起こしたクリス・クリングル
子どもたちにクリスマスとサンタクロースの楽しい夢を見させてあげたい、と思ってニューヨークにやってきたクリスが偶然見つけた相手は
ドリス・ウォーカーと
その娘スーザン
の母娘でした。
この母娘はサンタクロースもおとぎ話や童話も一切信じない母娘でした。
この母娘を相手に、クリスは
君たち母娘は、そのテストケースだ
君らに勝てれば望みあり
ということで、この二人をターゲットにして、サンタクロースの世界を信じさせようと頑張ったのでした。
なので、クリスにとっては奇跡でも何でもありませんが、ドリスとスーザン母娘にとってはまさに「奇跡」だったのです。
奇跡を起こすためのクリスの作戦、スタート
ただ、奇跡を起こそうとしても、クリス一人では無理です。協力者が必要です。
その協力者の筆頭が、母親ドリスに恋する新米弁護士の
フレッド・ゲーリー
です。サンタクロースの夢の世界を、将来娘になるかもしれないスーザンに教えてあげたかったのです。
そして、恐らくですが、クリスにとても好意的で協力的だった
メイシー社長
も協力者だったでしょう。クリスのおかげで商売がうまくいっただけでなく、「サンタクロースはいない」などとされたら、おもちゃ業界の書き入れ時のクリスマスに、おもちゃが売れなくなってしまいかねません。
作戦の始まりは、クリスが娘のスーザンと話をした時のことでした。
クリスがスーザンに
クリスマスに欲しいものはないか?
と聞くと、スーザンが取り出したのは新聞紙でした。
おとぎ話や童話を信じないスーザンが持っていたのは、新聞に載っていた「本物の家の記事と写真」だったのです。
クリス、これを見て
「難しい注文だ、でも最善を尽くそう」
と言って、その新聞紙を受け取りました。
これでターゲットが決まりました。新聞記事に写真が載っているということは、どこかにその写真の家があるということです。
この家を何とかしてスーザンにプレゼントすることが目標になりました。
作戦その次はフレッド・ゲーリーを味方につける
クリスはフレッド・ゲーリーの家で同居したのですが、どうやらそこである案が浮かんだようです。
素晴らしい作戦です。クリス・クリングル氏もなかなかの策士だったんですね。その二人の会話です。
クリス
都会が好きかね
ゲーリー
いずれは郊外に住みたい
邸宅ではなく、新米弁護士に買える家で
クリス
よく分かるよ
コロニアル様式の家だね
ゲーリー
そんなところだ
クリス
ウォーカーさんなら もう一押しだよ
食事か劇場に誘ってみたら?
ゲーリー
いつも忙しい人で
クリス
努力を
二人であの母娘を助けよう
君は母親を頼む
ゲーリー
よし
ゲーリーとドリス・ウォーカーとを結婚させて、あの写真の家に住まわせてしまえば、スーザンにとってはそれこそ
奇跡の
クリスマスプレゼント
になります。
それにしても写真のあの家は、メーシー社長に探してもらったんでしょうか。ここから先はメーシー社長の協力なしには難しかったでしょう。
途中、思いがけない裁判騒ぎが入ってしまいましたが、無事乗り切って、最後はドリスとスーザン母娘をディナーに招待しました。そして、その場所への車の運転はゲーリーの役です。
クリスは途中の道順をしっかりと書いてゲーリーに渡しました。
後はゲーリーがしっかりと地図通りに車を走らせて、スーザンが「奇跡の家」を見つけるのを待つだけです。
こうして「奇跡」が起こったんですね。
信じることの素晴らしさを、何とかしてドリスとスーザン母娘に教えたかったクリス・クリングルでした。
そしてテストケースは
大成功
だったのです。
参考
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