クリスマスの物語、クリスマスローズの伝説

寒い冬、たくさんの花々が散ってしまうクリスマスに、静かに咲く花、

  クリスマスローズ

この花の名前にも、ちょっぴり悲しい由来があります。

でも、悲しいだけではなく、ちょっぴり暖かさも感じさせてくれる物語がありました。

中村妙子さんが翻訳して下さった物語、

  「クリスマスローズの伝説」

がそれです。

その昔、ヨーインゲの森の奥のほら穴に、悪名高い泥棒一家が住んでいました。

大泥棒の親父とおかみさんと三人の子供たちでした。

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ヨーインゲの森

泥棒一家は、森の木の実やウサギなどを採って食べて生活をしていました。

でも、食べ物が無くなると街へ出かけて、盗んでくるのでした。

ある時、おかみさんが子供たちを連れて街に出かけました。子供たちは好き勝手に乱暴をするのですが、街の人たちは大泥棒の親父の仕返しが怖いので、手を出せませんでした。

そしておかみさんたちがエービドの修道院に行くと、そこにはきれいな薬草園があったのでした。

おかみさんはその薬草園の美しさにビックリしたのですが、すぐに

ヨーインゲの森にある自分の家の前の、年に一度クリスマスの前の晩に訪れる花園には遠く及ばないと思いました。

薬草園の世話をしていた修道士は、その話を信じませんでした。

でも、修道院の院長のハンス様は、ヨーインゲの森でクリスマスイブにさく花園の話を聞いていたので、自分にも見せて欲しいとおかみさんに頼みました。

おかみさんも、本当はみんなに見せたかったのですが、教えると泥棒の親父さんの居場所が分かってしまい捕まってしまうので、誰にも教えなかったのです。

でも、修道院の院長なら約束を破ったりしないだろうと思い、お供は一人だけ、そして誰にも教えないという約束で、案内することにしました。

そして院長は、アブサロン大司教という偉い人に、

  「ヨーインゲの森に咲いた
   花を届けてくれたら、
   泥棒の親父を赦す」

という赦免状をもらう約束を取り付けました。

ハンス様がお供の修道士と共について行ったヨーインゲの森への道は楽ではありません。

険しい崖、いばらの道、沼地、そして山道といった、とても険しい道でした。

ようやく泥棒のほら穴に着いてみると、泥棒の親父はほら穴の中の寝床で寝ていました。

そこは、貧しくてみすぼらしい住まいでした。

おかみさんは、

  外じゃこごえ死ぬから、
  早く中に入れ!

といって中に入れて寝床に案内すると、とても疲れていたハンス様はすぐに眠りについたのでした。

一緒に寝てしまった修道士が目をさますと、そろそろ花園が訪れようかという時間でしたが、

ハンス様とおかみさんがいろんな話をしているところでした。

すると泥棒はハンス様の顔の前にげんこつを出して、

  おれの家族に
  余計な話を聞かせるな

と言いました。

家族たちが街に行ってしまうと、自分がひとりぽっちになるからでした。

ハンス様が「泥棒の親父を赦す」という赦免状の話をすると、泥棒も

  赦免状がもらえたら
  泥棒をやめる

と約束しました。

花園の訪れ

するとおかみさんが、

  もう鐘の音が聞こえてる!

と言いました。確かに遠くから鐘の音がかすかに聞こえてくるのでした。

そして、一筋の光が差し込んだかと思うとこんどは暗くなり、またパァーッと明るくなり、

  輝くもやのように

光が押し寄せるのでした。

やみが次第に溶けていったと思うと、再び暗くなり、そしてまた新しい光の波がやってきます。

三度目の光は畑の匂いを運んできました。

木の実のひとつひとつがまるで小人のようでした。

ハンス様は野イチゴの実を手に取ったり、崖にはバラ、草地には大きな花だったりと、

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次から次へと美しい花が出てくるので、ハンス様は大司教に持ち帰る花をどれにするか、決めかねていました。

小鳥たちはハンス様の頭の周りを飛び回りましたが、修道士には近づきませんでした。

修道士は、この光景のことを

  「悪魔のしわざだ」

と思って、嫌っていたからでした。

花園の終り

その時、一羽のハトが勇気を出して修道士の肩の上に止まり、頭を修道士に寄せました。

でも、ハトのしぐさを

  悪魔の魔術

だと思った修道士は、片手を上げてハトをたたき、大声で

  地獄へ帰れ、
  悪魔の使いめ!

と叫んだのでした。

ハンス様が大地にうやうやしくひれ伏していた時のことでした。

この叫び声で、それまで歌っていた天使が歌うのをやめ、飛び去ってしまいました。

そして、光も、暖かさも消えて、

  やみが覆い、霜がおり

  森はふたたび
  真冬の中に戻った

のでした。美しい花園はその後、二度と訪れることはありませんでした。

ハンス様は最後の力をしぼって、大司教に届けるための花を探しました。

泥棒たちと修道士は何とかほら穴に戻りましたが、ハンス様は戻りませんでした。

みんなでハンス様を探しに行くと、ハンス様は雪に覆われ、冷たくなっていました。

でも、ハンス様の手には小さな丸いタネが2つ、しっかりとにぎられていました。

エービドの修道院に戻ると、修道士はハンス様がしっかりとにぎっていたタネを薬草園に植え、1年間、ずっとそのタネの世話をしました。

でも、春になっても秋になっても芽をだしません。

冬になって薬草園の花が全部枯れてしまうと、とうとう修道士はタネの世話をやめてしまいました。

でも、クリスマスがやってきた時、修道士はやっぱり気になって薬草園を見に行きました。

すると何とそこには、緑色のくきから銀色の葉が出て、その先には見たこともない美しい花がゆれていたのでした。

それはハンス様がヨーインゲの森で摘もうとした花でした。

修道士はアブサロン大司教のところにその花を持って行き、泥棒を赦すという赦免状をもらってきました。

その赦免状を泥棒のところに持って行くと、初めはオノを振り上げた泥棒も、赦免状のことを知って、家族でそのほら穴を出たのでした。

修道士はその後、そのほら穴でひとりで暮らしたとのことです。

そして、この美しい花は

  クリスマスローズ

と呼ばれたのでした。

参考

  クリスマスローズの伝説
  クリスマスキャロル、スクルージの性格を知ろう
  クリスマスキャロル、スクルージ改心の理由は
  クリスマスキャロル、あらすじと背景
  クリスマスキャロル、三人の精霊が伝えたかったこと
  賢者の贈り物の賢者の意味を知る
  三十四丁目の奇跡1947
  クリスマスの奇跡
  ベツレヘムの夜
  誰が鐘をならしたか
  クリスマスツリーの願い
  セント・ニコラスの話

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