認知症と生きる 心理的問題の理解、病気の理解

放送大学・「認知症と生きる」第7章

  認知症の人の行動と心理的特徴の理解②
  認知症と生きる 認知症の人の心理的問題の理解[7章B] 病気の理解
講義内容の整理

認知症という病気をしっかりと理解することで、よい対応ができるようにするための章です。

認知症は主として高齢者に多く見られますが、認知症という病気による影響の他にも、加齢ということがその人に与える影響も理解する必要があります。

そして、知る内容としては、

  もともとその人がどんな人だったかを理解する
  加齢が与える影響を理解する
  病気がその人に与える影響を理解する

があり、これらを

  ①身体面からの理解
  ②心理面からの理解
  ③生活障害の面での理解
  ④社会関係の面での理解

といった方面から理解することになります。

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身体面からの理解

認知症のケアでは、身体面での理解も大事になってきます。

今どんな病気を抱えているのかなどは、一般の高齢者なら言葉で介護者に伝えることができますが、

認知症の人の場合は、身体の痛みや不調などを言葉で訴えることがだんだん難しくなってきます。

たとえば、

  落ち着きがなく歩き回っている

  ⇒ 原因は便秘だった

あるいは、

  歩き方がおぼつかない

  ⇒ 原因は足の小指の骨折

などの例が報告されています。

このように、認知症の人は言葉で訴える代わりに行動で表現することも多いと言われます。

なので、介護に当たる人は認知症の人をよく観察して、行動からも訴えていることを知るということが大事になります。

あと、高齢者の機能を評価するものとして、一般には日常生活動作(ADL)というものがあります。

これは、「歩行」「移動範囲」「入浴」「食事」「排泄」などの項目を「完全に自立している」から「全面介助」まで段階的に評価します。

しかし認知症の人の場合は、このADLの評価だけでは適切に判断できないことがあります。

運動機能には問題がないのにできないという「手段的ADL」の評価も必要になります。

たとえば、電話を掛けるとか切符を買うなどといった、身体の運動機能としては問題がないにもかかわらずできないことなどがあります。

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心理面からの理解

認知症の人の場合でも、初期のころは自分の思いを言葉で表現したり、不安を訴えたりできるでしょう。

しかし症状が進行すると、徐々に言葉を使って表現することが難しくなってきます。

そして言葉の代わりに、だんだん行動で表現するようになってきます。

ですので、介護に当たる人は認知症の人を細かく観察し、不快な思いや不安な感情がないかどうかをくみ取ってあげるような努力が必要になります。

もちろん、この技術は簡単には身につくものではありません。ある程度の知識と経験が必要になります。

ただ、経験さえ積めば身につくということではありません。その人の行動から気持ちを理解しようとする努力と感性が要求されます。

それでも、認知症の人の起こす行動は何かのサインであり、その行動がいったい何のサインなのかを常に知ろうとする努力はとても大切です。

生活障害の面での理解

一般の人にも「もの忘れ」は起きますが、一般の人の場合は生活に支障をきたすほどにはもの忘れはしないものです。

ですが、認知症の人の場合のもの忘れは生活全般に支障をきたしてしまいます。

なので、認知症の人への支援は「生活障害」への支援であり、生活全般を援助することになります。

社会関係の面での理解

認知症という病気により、人間関係を始めとする社会関係にも障害を与えます。

それまでは仕事ができていた人が、もの忘れなどの症状によって今まで通り仕事ができなくなったり、地域の中での仕事をしていた人が、その仕事ができなくなったりします。

そしてこれらのことが原因で、社会関係・人間関係にも影響が出てきます。

さらには妄想、思い込みなどが原因となって、介護する人との人間関係にも影響が出てくることもあります。

このように認知症という病気は、ただ単に生活全般に影響が出るというだけではなく、

様々な社会生活に影響を及ぼすことを理解する必要があります。

参考

  (認知症と生きる 認知症の人の心理的問題の理解[7章A] 基本的理解)
  (認知症と生きる 認知症の人の心理的問題の理解[7章B] 病気の理解)
  (認知症と生きる 認知症の人の心理的問題の理解[7章C] 心理的特徴)
  (認知症と生きる 認知症の人の心理的問題の理解[7章D] 行動の特徴)
  (認知症と生きる 認知症の人の心理的問題の理解[7章E] 段階別対応)

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