認知症と生きる 心理的問題の理解、心理的特徴

放送大学・「認知症と生きる」第7章

  認知症の人の行動と心理的特徴の理解②
  認知症と生きる 認知症の人の心理的問題の理解[7章C] 心理的特徴
講義内容の整理

認知症に陥ることでよくみられる心理的な症状の特徴として、下記の面から考えてみます。

もの忘れに始まる、それまでの自分との違いに戸惑い焦っている状況が分かります。

  慢性的な不快感
   ・不快な気持ちが慢性化している

  焦燥感
   ・焦燥感や怒りの感情

  持続する不安感
   ・常に不安な状態にある

  被害感
   ・被害的になり訂正がきかない

  混乱
   ・判断力が低下し混乱する

  感情の変わりやすさ
   ・ちょっとした刺激に反応する

  自発性の低下とうつ状態
   ・行動力が低下し落ち込む

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慢性的な不快感

「ど忘れ」というのは認知症の人でなくてもよくあることです。

そして、たとえば人の名前をど忘れしてしまったとしたら、普通の人ならもやもやとした気持ちになるでしょう。

でもこの「ど忘れ」はたいてい後で思い出すことができます。健康な人の場合の90%は自力で思い出すと言われています。

ところが認知症の人の場合は思い出すことができません。

人の名前や物の名前が思い出せないという不快な感情が、日常的に起こることになります。

その分、「あれ」「これ」といった代名詞を使うことが増え、そしてそれを周囲の人に理解してもらえないと、さらにまた不愉快になってしまいます。

こんな感じで、認知症の人は常に不快な感情の中にいると考えられます。

焦燥感

自分が何かを探している時、そしてなかなか見つけられない時、

確かに置いたはずの場所を何度見ても見つからない時、

そんな時に起こる感情は、「焦り」あるいは「怒り」といった感情でしょう。

さらには、やろうとしていることがなかなか思い通りに運ばない時、イライラ感はさらに強くなります。

認知症の人は、常にこの「焦り」や「イライラ」の中にいると考えられます。

持続する不安感

人は知らない場所で知らない人たちの中にいる時は不安なものです。

さらに、自分がどこに行けばいいのか、何をすればいいのかが分からなくなった時にも、とても不安になるでしょう。

認知症になって、今がいつでここがどこか分からなくなったり、自分が知っているはずの人を知らない人のように感じたりしたら、不安はますます募ってしまいます。

認知症の人は、日常的にこんな不安の中で生活しているということを理解する必要があります。

被害感

認知症の人の体験で、

  目の前からいろいろな物が
   消えていく

ということを話してくれます。

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これは認知症の人が何かを探そうとして見つからない時の感覚なのでしょう。

健康な人であれば、いままで使っていたものがなくなった時、

  誰かに盗られた

とは普通は思いません。

家を出ようとして車のキーが見つからないなどという時でも、「誰かに盗られた」などとは思わないでしょう。

しかし認知症の人の場合は、自分でしまったことや、自分で使っていたことなどをそっくり忘れてしまうので、

しばらく探して見つからないと

  誰かに盗まれたのではないか?

と感じてしまいます。この疑問がいつか確信に変わっていきます。

そして盗ったのは、家族など自分を介護してくれる人ではないか、と疑ってしまうことになります。

混乱

認知症の人に共通にみられる症状としての

  もの忘れ
  見当識障害
  判断力障害
  実行機能障害

などで、つい先ほどのことが分からなくなったり、自分がいる場所が分からなくなったりで、混乱してしまいます。

周囲にいる人が誰だか分からなくなることでも混乱しますし、

実行機能障害が起きることで、いままでできていた料理が作れなくなってしまう、などの混乱も起きてしまいます。

こんな感じで、いろいろな場面で混乱してしまうことが増える結果となります。

感情の変わりやすさ

人は気分が落ち込んでいる時やイライラしている時などは、誰かのちょっとした言葉でも気に障ることは多いものです。

そして認知症の人の場合は、不安や焦りの中にいることが多いため、周囲のちょっとした言葉や行動にイラついたり興奮したりし易くなります。

  認知症の人は興奮しやすい

などと言われることがありますが、それは認知症の病気が原因で興奮しやすいということではなく、

認知症の病気がストレスを増やしてしまっている、ということでしょう。

自発性の低下とうつ状態

認知症の人は自分では「もの忘れ」に気づくことはあまりありませんが、

初期のころに、仕事や家事などで今までと同じことが同じようにできなくなることに気づきます。

そのことで徐々に気分が滅入ってしまい、抑うつ状態になることがあります。

それを周囲の人から指摘されたり、時には叱られたりなどするうちに、落ち込んで自発性が低下してしまうことが多くなります。

この「自発性の低下」は血管性認知症の人の共通症状とも言えます。

参考

  (認知症と生きる 認知症の人の心理的問題の理解[7章A] 基本的理解)
  (認知症と生きる 認知症の人の心理的問題の理解[7章B] 病気の理解)
  (認知症と生きる 認知症の人の心理的問題の理解[7章C] 心理的特徴)
  (認知症と生きる 認知症の人の心理的問題の理解[7章D] 行動の特徴)
  (認知症と生きる 認知症の人の心理的問題の理解[7章E] 段階別対応)

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