認知症と生きる、人とのかかわり③ 生認知症の人と権利 福岡宣言の後

放送大学・「認知症と生きる」第11章

  認知症の人とのかかわり③ 認知症の人と権利
  認知症と生きる 認知症の人とのかかわり③[11章E] 福岡宣言の後

講義内容の整理

認知症という病気が理解できなかった頃の、高齢者や認知症の人のケアは基本的に

  「縛るケア」

でした。

ケアをする側としては、本人の安全のためということで、ひもでベッドに縛ったり、立ち上がれないイスに座らせたりという、身体拘束が中心のケアでした。

しかし、身体拘束は高齢者や認知症の人の人権を奪っているのではないかということから、

  「縛る認知症ケアからの脱却」

を目指して、1998年に10の病院による「抑制廃止宣言」がなされました。福岡で行われたので、

  「福岡宣言」

と呼ばれました。

ここでは福岡宣言のその後の状況ということで、福岡宣言の最大の功労者とされる方の話がありました。

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福岡宣言

  認知症ケア福岡宣言

認知症の高齢者を介護やケアとして、24時間1日中病院のベッドなどに縛り付けておくことに疑問を感じた看護師の方が、ケアの方法の改善をくり返すうちに、ついには拘束の必要がなくなったことから、

  「縛る認知症ケアからの脱却」

を目指して、1998年に福岡で抑制廃止宣言がされたのでした。

この時の運動の中で、

  「人殺し」を「ポア」と言い換えると
   罪の意識は軽くなる

  「抑制」という医療用語も同じこと

の趣旨の話がありました。

ちなみに、この身体拘束の問題はアメリカでもあって、1991年の調査で、3割の利用者が身体拘束を受けていたため、禁止規則が設けられました。

また、イギリスでは1980年代~1990年代と、20年間に渡って身体拘束の規制をかけた結果、身体拘束がなくなったとのことです。

福岡宣言から15年たって

1998年に行われた「福岡宣言」の最大の功労者であり、現在ケアホームの施設長をされている方の、話の要旨の抜粋です。

(インタビューで)

「介護保険法」という法律ができて、介護する側とされる側との契約関係に変わったことで、意識は変わりました。

病院、特別養護老人ホーム、老人保健施設でも、意識は変わりました。

ただ、治療やその人の安全のためという時に、古い感覚が看護師や医師の方々にもまだ残っているようです。

さらに、法律を知らず、教育研修も受けていない若い世代では、「このくらいならいいだろう」と思ってしまうという問題は、まだ残っています。

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その結果、法律はあっても、介護保険施設ではまだ拘束ということが残っているのが残念です。

福岡宣言は思想・理念だったはずですが、これを現実にしようと看護師たち、特に老人病院の看護師たちが頑張ってくれました。

ところが、この思いが徐々に薄らいできてしまっているのが現実で、再び同じことが繰り返されてしまっています。

人の意識がどうしてこうも変わらないのかが不思議です。

(講師の先生からの質問)

家族が「縛ってください」と言ったり、一般の人が「あれは縛るべき」という意見があったりしますが?

(答)

家族は、本当はそうは思っていないはず。

虐待が常道化していても、縛られている姿や見るも変わった姿を見て、心の中では「ごめんなさい」と思っているはずです。

病院や治療の場でない所でも、「見れません」、「連れて帰ってください」と言わんばかりの対応をされたら、家族は「お願いします」としか言えないのが現実でしょう。

亡くなった後で親を思う気持ちを取り戻すのに、きっと何年もかかるでしょう。

縛られて苦しんで、鼻や胃に穴をあけられて、身体が固まって目が死んでいくような姿を、家族が望むはずがありません。

ただ、家族は素人なので認知症の理解が十分ではありません。その場の対応で何とかなるなら、それでもいいと思ってしまいます。

なので、これは社会問題として、医療も介護も人の死を受け入れる土壌が必要なのです。

(講師の先生)

この虐待の問題には地域全体で、また社会全体で取り組んでいく必要があります。

講義のこの部分を受講して

身体拘束や虐待に関しての思想や理念が、広く浸透するのには大変なエネルギーが必要なんだと感じます。

介護する側の知識やノウハウが不足している時、やはり当面の対応としての身体拘束などの方法が一時的に使用されてしまうと、それがいつしか常態化してしまって、結局元に戻るのかと感じます。

しかし、拘束などしないで認知症の介護を行っている施設はたくさんあるのも事実です。まずはその存在を多くの人に知ってもらい、次にそこでの介護のノウハウを多くの人に知ってもらうことが必要なのかなと感じます。

参考

  (認知症と生きる 認知症の人とのかかわり③[11章A] 認知症の人と人権・虐待の現場で)
  (認知症と生きる 認知症の人とのかかわり③[11章B] 認知症の人と人権・認知症と人権)
  (認知症と生きる 認知症の人とのかかわり③[11章C] 認知症の人と人権・偏見とイメージ)
  (認知症と生きる 認知症の人とのかかわり③[11章D] 認知症の人と人権・虐待と対応策)
  (認知症と生きる 認知症の人とのかかわり③[11章E] 認知症の人と人権・福岡宣言の後)

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