放送大学・「認知症と生きる」第6章
認知症の人の行動と心理的特徴の理解①
認知症と生きる 認知症の人に見られる症状[6章D] 問題行動など
講義内容の整理
認知症によって引き起こされる症状には、脳の障害が原因で多くの人に共通して起こる症状(中核症状)と、それらに付随して起こる
行動・心理症状 (周辺症状)
とがあります。
以前はこれらの行動・心理症状を、「問題行動」「行動異常」などと呼んでいた頃もありましたが、
これは本人の立場というよりも、介護する側の立場からみて問題や異常とみられたということなので、
現在では「認知症の行動・心理症状」と呼ばれるようになっています。
行動・心理症状(周辺症状)は中核症状が背景にあり、そこに身体の不調やストレス、周囲からの関わりの要因などから、人によって様々な症状を呈することになります。
行動・心理症状は、「対処の難しさ」によって、「グループⅠ」(難しい)から「グループⅢ」まで分かれています。
行動症状・心理症状
行動症状の中で対処の難しいグループⅠとして、「身体攻撃性」「徘徊」「不穏」の3つの症状があげられています。
グループⅡとしては、「焦燥」「社会通念上の不適切な行動と性的脱抑制」「歩き回る」「喚声」の4つの症状。
比較的処置しやすいグループⅢでは、「泣き叫ぶ」「ののしる」「無気力」「繰り返し尋ねる」「つきまとい」の5つです。
また、心理症状の中でやっかいで対処の難しいグループⅠとしては、「妄想」「幻覚」「抑うつ」「不眠」「不安」の5つの症状が挙げられています。
グループⅡにも「誤認」が挙げられています。
行動・心理症状の捉え方
行動・心理症状の重症度の捉え方は、従来はどちらかと言えば本人の苦痛の度合いというよりは、介護する側の大変さということで判断されていた傾向がありましたが、
近年は、本人が苦痛を感じることなく生きていけるということを中心としてとらえ直されています。
行動・心理症状に関しての具体的な対応については、下記のリンクより。
(認知症と生きる 様々な行動の特徴[8章])
近年は認知症に関する研究がとても進んでいます。
先日、2018年10月の番組「ガッテン!」でも、
「認知症の人が劇的変化
アイコンタクトパワー」
ということで、認知症の人を相手にする際の注意点として、正面からしっかりとアイコンタクトをとることが、
とても大事だということの説明がありました。
正面からしっかりとアイコンタクトをとって、認知症の人に、
これから、
誰が、何をするのか
をしっかりと理解してもらってから次の行動に移すということがキーポイントとのことでした。
これがないと、たとえば腕をつかまれた場合、認知症の人は
突然、
誰かに腕をつかまれた!
ように感じてしまい、その結果振り払ったり、暴れたりといった行動に移ることがあるようでした。
さらには、2008年11月の番組、「プロフェッショナル」
での大谷るみ子さんは、その仕事ぶりが海外にも紹介されているとも言われていましたが、
その大谷さんのグループホームでは、暴れたり叫んだりしている人はいない様子でした。
「暴れたり、大声をあげたりするのは、
心の苦しさの表れだと考えられている」
とも紹介されていました。
さらに、その大谷さんが若い頃、北欧デンマークの認知症介護の現場を訪問した際に見たものは、
当時の、認知症の人が拘束されていた日本の現状とは全く異なる、
みんな穏やかで、誰も拘束などされていなかった姿でした。
研究が進むにつれて、認知症の人も穏やかに過ごせる時代がまもなく来るように思います。
参考
(認知症と生きる 老化と認知症との違い[6章])
(認知症と生きる 認知症の人に共通の特徴[6章A] 記憶、判断)
(認知症と生きる 認知症の人に共通の特徴[6章B] 見当識障害)
(認知症と生きる 認知症の人に共通の特徴[6章C] 失認、失行)
(認知症と生きる 認知症の人に見られる症状[6章D] 問題行動など)