認知症と生きる 認知症の医学的な特徴4、周辺症状と薬物療法

放送大学・「認知症と生きる」第5章

  認知症の医学的な特徴④
  認知症と生きる 認知症の医学的な特徴4[5章G] 周辺症状と薬物療法

講義内容の整理

徘徊や妄想などの認知症の周辺症状に関しては、まずは非薬物療法による対応ということが原則ではありますが、

実際の医療現場ではさまざまな向精神薬が使用されていることも現実としてあります。

「認知症の人に対して、どれだけの向精神薬を使用しているか」という調査では、90%以上の医師が何らかの向精神薬を認知症の人に投与していた、ということでした。

しかし、周辺症状に対して実際に効果のある向精神薬は限られているとも言えます。

そこで、ここでは周辺症状に対しての薬物療法を、抗精神病薬、抗うつ薬、睡眠導入薬に分けて見ていきます。

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抗精神病薬

抗精神病薬として、リスパダール、ジプレキサ、セロクエル、エビリファイといったものが、一般的に認知症の周辺症状・BPSDに対して効果があると言われています。

ただし、対象となる症状としては、焦燥、興奮、攻撃性といったものや、幻覚あるいは妄想といった精神病症状に対して効果のある薬ということです。

そしてこれらはあくまで中等度から重度のものに対しての薬ということです。それは本人だけでなく、周囲の人にも害が及ぶような程度ということです。

これだけ重い症状の時に効果がある薬だということです。

ところで、「抗精神病薬」というのは、「統合失調症」などの疾患で、どちらかと言えば若い人を対象とした薬なので、認知症の人に投与する場合は、非常に少量から始める必要があります。

そして、鎮静作用も強いので、転倒・骨折のリスクにも十分な注意をする必要もあります。

副作用としてはこの他に、パーキンソン症状があります。歩行障害や手の震えなどの副作用です。なので薬を服用することによって、こうした症状が現れたら注意が必要と言えます。

抗うつ薬

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一般的には効果があるとはされていないのですが、抗うつ薬は実際の臨床で投与されることの多い薬です。

認知症では、SSRI選択的セロトニン再取り込阻害薬、あるいはSNRIセロトニンーノルアドレナリン再取り込阻害薬のタイプが第一選択となっています。

これらはうつ病の人に効果のある薬ですが、これらの中で、SSRIやSNRIは副作用の少ないタイプの薬と言えます。

ただし、厳密な研究・試験等の結果では、有効性は一定してはいないのが現状です。

むしろ抗うつ薬は認知症の人の場合には転倒リスクが高まるという報告もあります。少なくとも転倒リスクには十分な注意が必要と言えます。

ジェイゾロフト、レクサプロといった薬がその具体的なものです。

睡眠導入薬

これはいわゆる睡眠薬ですが、これも実際の認知症診療で用いられることの多い薬です。

認知症の人の場合は、昼夜逆転が多いため夜眠れないという訴えが多いのですが、この場合も薬を使用する前に、非薬物療法を優先させることが大切です。

具体的には、昼に家にこもっているのではなく、外に出て日光を浴びるような作業をしたり、デイサービスなどを利用して外出をするなどのことです。

睡眠薬を飲んでいる人の場合は、実際には昼間は家の中でごろごろしているといったことが多いのも特徴です。

こういった意味でも、睡眠薬を使用する前に、ここで挙げたような非薬物的介入を優先して行うことが望ましいと言えます。

参考

  (認知症と生きる 認知症の医学的な特徴4[5章A] 治療薬の概要)
  (認知症と生きる 認知症の医学的な特徴4[5章B] 中核症状薬)
  (認知症と生きる 認知症の医学的な特徴4[5章C] 認知症薬の効果)
  (認知症と生きる 認知症の医学的な特徴4[5章D] 認知症の進展)
  (認知症と生きる 認知症の医学的な特徴4[5章E] 周辺症状薬)
  (認知症と生きる 認知症の医学的な特徴4[5章F] 非薬物療法)
  (認知症と生きる 認知症の医学的な特徴4[5章G] 周辺症状と薬物療法)

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