認知症と生きる 老化と認知症との違い

放送大学・「認知症と生きる」第6章

  認知症の人の行動と心理的特徴の理解①
認知症と生きる 老化と認知症との違い[6章]

講義内容の整理

認知症によって表れる症状に多いのは、記憶の障害ですね。

でもこの記憶の障害、俗には物忘れは認知症の人じゃなくても起こります。

認知症の人の物忘れと、老化による物忘れとの差はどこにあるんでしょうか。

この点について整理してみました。

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生理的老化と認知症との違い

・もの忘れの特徴

もの忘れは認知症の人じゃなくても、若い人にも老人にももちろん起こります。

そして高齢になれば、確かにもの忘れの回数も増えていくでしょう。

なので、認知症によるもの忘れと加齢によるもの忘れとの違い比較してみます。

ちなみに、

  加齢によるもの忘れ = 健忘

と言って、「健やかに忘れる」つまり健康だという意味なのだそうです。

  健忘 = 体験の一部を忘れる

朝ごはんを食べたということは覚えていても、何を食べたかということを全部思いだすことは難しいかもしれません。
ましてや、どういう順番で食べたかを思いだそうとしたら、むしろ覚えている人の方が少ないでしょう。

こんな忘れ方は健康的な忘れ方と言えます。

  認知症= 体験全体を忘れる

認知症でのもの忘れは体験全体を忘れます。

なので、朝ごはんを食べたこと自体を忘れてしまったり、誰かから電話がかかってきても、電話があったこと自体を忘れてしまいます。

・もの忘れの自覚

  健忘 = もの忘れの自覚がある

  認知症= もの忘れの自覚がない

高齢になればもの忘れが増え、

  最近忘れっぽくなって困る

という人も増えます。

これは約束の時間を忘れたり約束の場所を忘れたりするもので、誰にでも起こるもの忘れ、つまり健忘です。

言うなれば、「忘れた」ということを覚えているとでも言えるのでしょう。

それに対して、認知症の人の場合は体験自体を忘れてしまっているので、多くの場合忘れているという自覚がありません。

  そんな約束はしてない!

などと言い張ることにもなります。

なので、

  最近もの忘れが多いので
   病院に行きましょう

と言っても、なかなか納得してくれません。

健康な人でもこういうことも時にはありますが、認知症の人の場合は日常的に起こるようになります。

・進行性のもの忘れ

  健忘 = もの忘れの進行が遅い

  認知症= もの忘れの進行が速い

健康な人でも年齢とともにもの忘れの度合いは増えて行きます。

ただ、それでも手帳やカレンダー、メモなどを取ることでもの忘れをかなりの部分防ぐことができます。

でも、認知症の場合のもの忘れは頻度も程度も悪化するので、初期の認知症の段階ではメモを取ったり手帳に書いたりできても、徐々にメモの場所を忘れたり、手帳に書くことを忘れたりするようになります。

そして、次第にメモを取ったこと自体も忘れるようになります。

・見当識障害

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  健康な人= ここは? この人は?
          の検討がつく

  認知症 = ここは? この人は?
          の検討がつかない

健康な人だと、今何時ぐらいなのか、ここはどこなのか、近所の人の顔は見たことが? など、はっきりとは分からなくてもある程度見当が付きます。

それに対して、認知症の人の場合はこの見当がつきにくくなります。今何時だろう? 家に帰るにはどう行けばいいんだろう? ということになってしまいます。

見当識には、時間の見当識、場所の見当識、人に対する見当識などがあります。

・行動・心理症状(BPSD)

認知症になると、

  徘徊、妄想、攻撃的行動

などの、認知症特有の行動が増えてきます。

・日常生活への影響

  健忘 = 日常生活への影響は少ない

  認知症= 日常生活が困難になる

健康な人だと、もの忘れがあっても日常生活が営めないほどではありませんが、

認知症の人の場合は、もの忘れの程度が悪化しさらに見当識障害などの影響もあって、日常生活を営むことが困難になります。

  ここまで

ところで、朝ごはんを食べたことを忘れるという話にやや関係のある実験がありました。

  スープを飲む量と
   満腹感の実験

をした人がいました。

普通ならお皿にいっぱいのスープを飲むと満足するのですが、

そのお皿にこっそりインチキ加工をして、スープをスプーンですくって飲んでも、

それに応じた量のスープを分からないようにこっそり補充してしまい、

実際よりも少ない量しかお皿からスープが減りません。

そうとは知らない被験者がスープを飲んで、本当はお皿いっぱい分のスープを飲んだにも関わらず、

まだスープの入っているお皿を片づけようとすると、

  まだ飲み終わっていない

と怒り出すという実験でした。

どうやら満腹感はお腹だけで分かるものではないようでした。

朝ごはんを食べた記憶がなくなった認知症の人にとっては、朝ごはんを食べた後でもまだ空腹感が実際にあるのかもしれません。

ということは、逆に朝ごはんを食べたことを理解させてあげれば、空腹感はなくなるのかもしれませんね。

参考

  (認知症と生きる 老化と認知症との違い[6章])
  (認知症と生きる 認知症の人に共通の特徴1[6章A] 記憶、判断)
  (認知症と生きる 認知症の人に共通の特徴2[6章B] 見当識障害)
  (認知症と生きる 認知症の人に共通の特徴3[6章C] 失認、失行)
  (認知症と生きる 認知症の人に見られる症状[6章D] 問題行動など)

  (認知症と生きる サポーターの役目)
  (認知症の思わぬ脅威)
  (介護はファンタジー 認知症介護)

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