放送大学・「認知症と生きる」第5章
認知症の医学的な特徴④
認知症と生きる 認知症の医学的な特徴4[5章D] 認知症の進展
講義内容の整理
現在承認されている抗認知症薬は4種類だけですが、根本的なものではありません。
そのため、いまでも世界中で新しい認知症薬の開発が行われています。
そして、アルツハイマー型認知症の場合、実際に認知症として症状が発生する以前から、脳内では種々の変化が起きていることが分かっています。
ここでの話はアルツハイマー型認知症が脳の中でどのように始まり、どのように進展していくのかの話です。
アミロイドの蓄積
下はアルツハイマー型認知症の病態仮説を示した図です。
アルツハイマー型認知症では、老人斑と呼ばれるしみのようなものと、神経原繊維変化というものが脳の中にたまることが特徴です。
そしてこの「老人斑」は
アミロイド
という物質からできています。
このアミロイドが蓄積された結果として老人斑ができることになります。
アミロイド ⇒ 老人斑
そして、この老人斑ができることで神経原繊維変化が起き、
老人斑 ⇒ 神経原繊維変化
この老人斑と神経原繊維変化とが何らかの作用を起こした結果、脳の
神経細胞死
を起こして脳が委縮して「アルツハイマー型認知症」となるという説が、現在は有力となっています。
アルツハイマー型認知症の進展
上記アミロイド仮説を基に認知症の進行を時間軸で見ると、
ADはアルツハイマー型認知症です。
またバイオマーカーとは生物的指標で、
血液や尿などの体液や組織に含まれる
タンパク質や遺伝子などの生体内の物質で、
病気の変化や治療に対する反応に相関し、
指標となるもの
とされています。(国立がん研究センターより)
アミロイドなどが重要なバイオマーカーですが、それ以外にも脳画像などもバイオマーカーと言います。
上記の画像は仮説の段階ではありますが、認知症は②の点線あたりから始まり、②から③の点線の間の段階に当たります。
②の点線の段階からもの忘れが始まるということです。
しかし上の図からも分かるように、実際は認知症は発症するずっと前から、時には何十年も前からアミロイドが少しずつたまってきています。
そしてアミロイドが蓄積されることで、シナプスの機能が障害されてきます。
そして、タウ介在性神経障害(髄液)の異常(≒神経原繊維変化)が出てきます。
このような次々と変化していく流れの中で、脳委縮が起こり、①の点線あたりから軽度の認知機能障害が見られるようになります。認知症と健常者との間というレベルです。
さらに認知機能の障害が進むことで、実際に生活に支障が出始めることになります。
その②の点線あたりで、最終的に「認知症」の症状が発症したということになります。
こうした説が、アミロイドの仮説を基に考えられています。
このことで分かるように、脳の中では症状が出るずっと前から変化が起きているので、症状が出る前から薬を投与すれば、より効果的な治療が可能だと考えられています。
そして、そういった臨床試験が現在でも盛んにおこなわれています。
参考
(認知症と生きる 認知症の医学的な特徴4[5章A] 治療薬の概要)
(認知症と生きる 認知症の医学的な特徴4[5章B] 中核症状薬)
(認知症と生きる 認知症の医学的な特徴4[5章C] 認知症薬の効果)
(認知症と生きる 認知症の医学的な特徴4[5章D] 認知症の進展)
(認知症と生きる 認知症の医学的な特徴4[5章E] 周辺症状薬)
(認知症と生きる 認知症の医学的な特徴4[5章F] 非薬物療法)
(認知症と生きる 認知症の医学的な特徴4[5章G] 周辺症状と薬物療法)