認知症と生きる 認知症の医学的な特徴4、周辺症状薬

放送大学・「認知症と生きる」第5章

  認知症の医学的な特徴④
  認知症と生きる 認知症の医学的な特徴4[5章E] 周辺症状薬

講義内容の整理

アルツハイマー型認知症に対しての治療薬は、現在までも非常にたくさんの薬が開発されました。

それらひとつひとつの名前をあげることも大変なほどの数の治療薬が開発され、試みられたのでした。

その中で、いろいろな段階の臨床治験を経て、最終的に効果と安全性が確認されたものだけが承認され、実際に使用されることになります。

ところが、膨大とも言えるほどの数の薬の中で、承認にまで至ったものは、ドネペジル、リバスチグミン、ガランタミン、メマンチンの4種類だけというのが現状で、実際のところ開発はうまくいっていないというのが実情です。

それに対して、ここで話そうとしている周辺症状に関しては、介入のしかたによっては治療しうるということで、非常に重要です。

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周辺症状に対する治療原則

周辺症状は、認知症の中核症状が基で起きる、各種の心理症状や行動の症状のことです。

これらの周辺症状に対しての治療原則です。

 ・周辺症状に対する治療原則

  ①まず治療が必要な周辺症状かを検討する

  ②環境調整や非薬物療法で対応が可能かを検討する
   身体疾患(感染症など)、現在投与されている
   薬剤などが原因になっていないかを検討する

  ③まず非薬物療法を検討し、効果不十分な場合、
   緊急を要する場合に薬物療法を検討する

この治療原則では、まず治療が必要な周辺症状なのかを検討し、環境調整や非薬物療法で対応できないかを検討することが大事ということです。

身体の疾患や現在投与されている薬物が原因になっていないか等を十分に検討することです。

そして、それでも効果が不十分だったり、あるいは緊急を要する場合などに限って薬物療法を検討する、というのがここでの原則です。

周辺症状治療の必要性について検討

 治療が必要な時とは

  患者自身にとって苦痛やリスクになっている場合
  介護者や家族の負担になっている場合  

  ⇒例えば「幻視」があっても、
   必ずしも治療する必要はない

周辺症状の中には必ずしも治療をする必要がない場合もあり、患者自身や介護をする人にとっての苦痛やリスクとなっていない限りは、介入する必要がないわけです。

例えばレビー小体型認知症の人の場合に多くみられる「幻視」がありますが、本人に多少の不安があったとしても、また家族にとって「ちょっと変だな?」という感じがあっても、特に生活に支障がなければ無理に治療をする必要がないことになります。

周辺症状の原因の検索

必要性の検討の結果「介入が必要である」となった場合には、次に周辺症状の原因を探ることになります。

 周辺症状の原因の検索

  身体疾患
  併発症の治療薬
  環境・状況(家族関係、住環境など)

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  ⇒原因に対する治療を優先
    身体疾患の治療
    服用薬の調整
    福祉サービスの利用

介入する場合に考えることは、まず第一には「薬ではなく、非薬物的な対応」ということが大事です。

非薬物的対応、つまり「ケア」で対応できないか? ということが第一に考えるべきことと言えます。

原因を探るにあたっては、身体疾患やいっしょに飲んでいる薬、あとは環境や状況などから原因を探っていきます。

それと同時に、福祉サービスの利用で解決ができないかを考えていきます。

まずは環境を調整する、そして「非薬物的な対応、ケア」から考えていくということが介入の原則です。

周辺症状の出現原因

以下の図は、周辺症状の出現原因としての図です。

認知症の人は、基盤として中核症状があります。それによって不安感、不快感、焦燥感などの要因、さらには被害感、身体不調、ストレスなどが加わった結果、幻覚や徘徊などの周辺症状(行動・心理症状:BPSD)が出ることになります。

こうした原因の排除や環境の調整が重要になります。

例えば環境の調整では、下記のような内容が役立つかもしれません。

 環境調整

  ・認知症の診断結果を家族に説明する際に、
   医師は、症状の特徴、予想される症状を
   説明しておくことが有効

  ・デイケア・デイサービスなどを利用し、
   昼夜のリズムを整えたり、物理的に
   介護者との接触時間を減らすことにより
   徘徊や妄想が消退することも多い

医師は、家族に対して症状の特徴や今後予想される症状などを説明しておくことで、家族の対応が適切になされ、周辺症状の出現を予防することもあり得るでしょう。

またデイケアやデイサービスなどの利用で、介護者との接触を減らすことによって、介護者の精神的ストレスの減少にも役立ちます。

その結果、介護者の対応にも余裕がでてきて、徘徊や妄想が消退することも多々あります。

参考

  (認知症と生きる 認知症の医学的な特徴4[5章A] 治療薬の概要)
  (認知症と生きる 認知症の医学的な特徴4[5章B] 中核症状薬)
  (認知症と生きる 認知症の医学的な特徴4[5章C] 認知症薬の効果)
  (認知症と生きる 認知症の医学的な特徴4[5章D] 認知症の進展)
  (認知症と生きる 認知症の医学的な特徴4[5章E] 周辺症状薬)
  (認知症と生きる 認知症の医学的な特徴4[5章F] 非薬物療法)
  (認知症と生きる 認知症の医学的な特徴4[5章G] 周辺症状と薬物療法)

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