放送大学・「認知症と生きる」第5章
認知症の医学的な特徴④
認知症と生きる 認知症の医学的な特徴4[5章A] 治療薬の概要
講義内容の整理
認知症の症状としては、基本的な症状(中核症状)と、それに付随して起きる周辺症状とがあります。
そして、治療薬としても中核症状に対する治療薬と周辺症状に対する治療薬とがあります。
認知症の中核症状に対する治療薬としては何種類か実用化されてはいますが、根本的な治療が可能な薬というわけではありません。
認知症の進行を遅らせる効果が期待されるものがいくつかあると言った程度が現状です。
一方、認知症によって起きる様々な症状である周辺症状は多岐にわたっており、様々な薬があります。
ここでは、これらの薬にどのようなものがあるのか、このような効果があるのかなどを見ていきます。
認知症の中核症状と周辺症状
認知症は基本的に脳が委縮して起こる病気です。
その脳の萎縮によって起きる症状が中核症状で、下記のような症状があります。
・中核症状
記憶障害 : 新しいことを覚えられない
見当識障害: 「いつ、どこ、だれ」が分からない
実行機能障害:段取りが立てられない、計画できない
失認 : 物が何か分からない
失語 : 物の名前が出てこない
失行 : 服の着方が分からない、道具が使えない
中核症状は認知症の中核的な症状である認知機能障害で、記憶障害、見当識障害、実行機能障害などがあります。
そしてこれらの中核症状の結果付随して起こる症状が周辺症状で、「行動・心理症状」とも言われます。周辺症状には下記のような症状があります。
・周辺症状
徘徊 : 無目的に歩き回る(ように見える)
外に出ようとする
猜疑心 : 疑り深くなる
幻覚 : いない人の声が聞こえる、
実際にないものが見える
抑うつ : 気持ちが落ち込んで、やる気がない
妄想 ; 物を盗られたと言う
いじめられていると言う
不安・焦燥: 落ち着かない、イライラしやすい
暴言・暴力: 大きな声をあげる
手をあげようとする
性的逸脱行為:体を触ったり、
卑猥な言葉をなげかけたりする
食行動異常: 何でも食べようとする
昼夜逆転
周辺症状は中核症状から派生して、徘徊や猜疑心や幻覚などの様々な精神上の、また行動上の症状が出現したものです。
認知症の薬は大きく中核症状と周辺症状とに分けて考えられます。
・中核症状用
コリンエステラーゼ阻害剤
メマンチン
・周辺症状用
向精神薬(抗精神病薬、抗不安薬など)
中核症状に対する薬物療法
認知症のための薬は非常に多くのものが作られていますが、中核症状に対して承認されている薬はその中のごく一部だけで、アルツハイマー型認知症とレビー小体型認知症に対するものだけです。
・世界で販売されている抗認知症薬(中核症状用)
コリンエステラーゼ阻害剤
・ドネペジル
・ガランタミン
・リバスチグミン
メマンチン
日本では、コリンエステラーゼ阻害剤としてのドネペジルとガランタミンは飲み薬ですが、リバスチグミンは貼り薬です。
メマンチンはコリンエステラーゼ阻害剤と同じような効果をもたらしますが、作用の内容は前の3つとは異なりますので、別のタイプの薬となります。
ただし、中核症状に対しての治療、つまり脳の萎縮を治療する根本的な薬というものはまだ発見されていません。
参考
(認知症と生きる 認知症の医学的な特徴4[5章A] 治療薬の概要)
(認知症と生きる 認知症の医学的な特徴4[5章B] 中核症状薬)
(認知症と生きる 認知症の医学的な特徴4[5章C] 認知症薬の効果)
(認知症と生きる 認知症の医学的な特徴4[5章D] 認知症の進展)
(認知症と生きる 認知症の医学的な特徴4[5章E] 周辺症状薬)
(認知症と生きる 認知症の医学的な特徴4[5章F] 非薬物療法)
(認知症と生きる 認知症の医学的な特徴4[5章G] 周辺症状と薬物療法)