放送大学・「認知症と生きる」第15章
地域で支える・5サミット
認知症と生きる 地域で支える[15章E] 5サミット
講義内容の整理
認知症に関わるさまざまな問題の解決のためには、医療や介護といった限定された枠組みの中だけではなく、自分たちの町をつくっているすべてのプレーヤーがつながりあっていく必要があります。
その時そのプレーヤーとは、地域の人々の他にどのようなプレーヤーが必要になるのでしょうか。
近年、認知症に関わる問題の解決のための新しい取り組みが各地に広がりを見せています。
その取り組みの中のひとつとして、
認知症フレンドリージャパン・イニシャチブ
という活動があり、その活動の一環として、
認知症フレンドリージャパン・サミット2014
が開催されました。
ここでは、このサミットの主催者の方のお話しの紹介です。
認知症フレンドリージャパン・サミット
認知症フレンドリージャパン・イニシアチブに関してはホームページで、
認知症フレンドリージャパン・イニシアチブは、
企業・自治体・NPOなどのセクターを越えて、
認知症の課題を起点に、未来を考え、
アクションを起こしていくネットワークです。
と紹介されています。
これは、認知症の問題を
「医療や介護の枠組みの中だけで考えるのではなく、
社会のデザインの問題と捉える」
というもので、社会全体の問題として認知症の問題を考えていこうという取り組みのことです。
認知症フレンドリージャパン・サミット2014を主催した、認知症フレンドリージャパン・イニシアチブの代表の方のお話です。
・認知症フューチャーセンターとは?
フューチャーセンターというのは、認知症に限らず、日本だけに限らず、海外も含めいろんなテーマで活動をしています。その中に、認知症をテーマにした活動も含まれます。
一般に社会的な課題というのは、いろいろな人々が絡み合っているので、ひとつの団体やグループだけで頑張ってもうまくいかないことが多いものです。
そういう社会課題の解決のために、多くの人が集まり話し合うことで解決策を見つけよう、という取り組みの場所がフューチャーセンターです。
ヨーロッパなどで始まっていますが、日本では企業などが中心になって活動が始まっています。
認知症とは違うテーマで、たとえば「新しいビジネスを生み出す」といったテーマなどがあります。
あるいは「子育てをしやすい社会をどうやったらつくれるか」というようなテーマもあります。
そんな場にたまたま私が呼ばれた時に、これは「認知症」のテーマにも関係すると感じました。
そこで、企業の人たちや研究している人たちと協力し、認知症をテーマにしたフューチャーセンターを2011年に立ち上げ、活動を始めました。
・認知症では、医療や福祉の人々も
いろいろ活動をしていますが、
それと違う部分というのは?
いちばん大きな違いは
集まる人の多様性
です。
医療や福祉のテーマだと、医療関係者や福祉関係者、あるいは介護されている家族、または当事者の人ぐらいの集まりになります。
私の考える
認知症の課題のすそ野
は、たとえば
一般の人が暮らす地域の
商店街の人
も含まれます。さらに
その人たちの生活を支えている
商品やサービスを提供している
企業の人
も入ると思います。
なので、医療や福祉関係者も当然大事ですが、
そこに入ってこない人たちを
どうやって巻き込むか?
が大事になります。
フューチャーセンターでは、通常かかわりのなさそうな人たちと、どんなテーマが共有できるかといったことを話しあっています。
・認知症フレンドリージャパン・イニシアチブとは
フューチャーセンターの取り組みでは、2011年から年に2回ぐらいのセッションを重ねてきましたが、
いよいよアクションを起こすという時の活動のためのプラットフォームの役目が必要となり、立ち上げたのが認知症フレンドリージャパン・イニシアチブです。
「認知症の人も含めて
暮らしやすい地域を
つくっていく」
というテーマでした。
賛同できる人、問題意識を共有できる人が集まれる場所ということで、2013年の11月に立ち上げました。
例えば企業にいる人が
「こういう商品サービスが
必要だ」
と思った時に、認知症の当事者や家族、介護者などが協力できる、また自治体の人も協力する、そんな場所として「認知症フレンドリージャパン」を作ったのです。
・今回の認知症サミットの狙いは?
G8では国際的にも認知症をテーマにしたサミットが開催されていますが、こちらはどちらかといえば、認知症の人が増えることによる社会的コストの増加を問題とした、いわば政治的なものです。
でも、私たちがやろうとしているのは完全に民間です。そして認知症フレンドリージャパンでやろうとしているのは、認知症の課題に対しての
対症療法ではない形
でのアクションを起こしたい、あるいは
対症療法では限界がある
と感じる人たちといろいろ話し合う、そのための第一歩にするのが目的です。
この講義を受講して
日本にもこんな風に認知症の問題を真剣に考えている人がいるということに感激してしまいました。
認知症の問題は、不幸にして認知症になってしまう人たちだけでなく、その他の多くの人たちにも大きな影響をもたらすものだと思います。
65歳以上の高齢者の10人に1人が認知症であり、予備軍と言われる人たちを含めると4人に1人が認知症ということになるという社会は、もはや認知症の人々だけの問題ではありません。
まさに
他人事
ではなく自分事
と言えます。
誰にとってもいつ訪れるか分からない認知症は、「病気になりました。入院しましょう」というだけでは済まない話です。
そういう意味でも、認知症になっても安心して暮らせる社会にするために頑張っている人たちがいる、ということはとても心強いです。
参考
(認知症と生きる 地域で支える[15章A] 1取り組み)
(認知症と生きる 地域で支える[15章B] 2認知症カフェ)
(認知症と生きる 地域で支える[15章C] 3安心の条件)
(認知症と生きる 地域で支える[15章D] 4プロジェクト)
(認知症と生きる 地域で支える[15章E] 5サミット)
(認知症と生きる 地域で支える[15章F] 6企業)