認知症と生きる 当事者から見る認知症・本人編2

放送大学・「認知症と生きる」第13章

  当事者から見る認知症 本人編2
  認知症と生きる 当事者から見る認知症[13章C] 本人編2

講義内容の整理

認知症とはいってもいろいろな状況があります。

認知症の人同士が出あえるネットワークや交流できる場、自己表現ができる場なども大切なものですが、

たとえば若年認知症の人に話を聞くと、

  「仕事がしたい」

と言う人がかなりいます。

ここでは、「仕事がしたい」という若年認知症の人のためのデイサービスを行っているNPO法人の代表の方のお話しです。

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仕事がしたい

同じ認知症でも、若年認知症の人の場合に比較的多く聞かれる「仕事がしたい」という声は、仕事をリタイアした高齢の認知症の人からはほとんど聞かれません。

40代、50代、あるいはそれ以前に認知症と診断された働き盛りの人たちにとっては、生活の基盤を支える仕事ができない状態は危機的な状況に感じてしまいます。

以下は、こうした認知症の人達の就労支援に取り組む、東京町田市の認知症デイサービスのNPO法人の代表の方のお話しです。

 ・「つながりの開」が
  「会」ではなく「開」なのは?

これは、社会を変えていきたいという、同じ志を持つ人たちが集まったのが、

  居酒屋 「開」

だったからです。

誰もがつながって安心できる、そんな町田市になればいいなという思いでした。

 ・具体的には?

若年認知症の人の働きたい、人の役にたちたいという思いのため、仕事の依頼、たとえば草取りや掃除などをするといった活動を、本人たちと一緒に行うというものでした。

 ・就労を支援する上で大切なことは?

認知症の人は肉体労働しかできない、あるいはみんながみんな働きたいと思っている、といったような決めつけをなくすことが大事です。

どうしたいのかをひとりひとりに聞きました。

1から10までの一連の動作の5と7の部分ができないため、1から10までたどり着けない、

そんな時に5と7のピンポイントの支援をすることで、本人の思いの実現に結びつきます。

 ・以前は認知症の人が仕事をしても
  賃金を得ることができなかったが?

介護サービスの9割分は国からの給付で成り立っていました。その中で本人が仕事をして対価を得るというのはどうか、ということで賃金が得られませんでした。

 ・現在は就労して、対価を
  受け取れるようになったが?

取り組みを始めて、通知が来るまで5年かかりました。

最初は本人たちがどう思っているのかを、国の担当者に聞いてもらうところから始めました。

一人の声、二人の声、と増えていって、ようやく5年かけて介護保険のサービス中でも、報酬ではなく

  「謝礼」

なら受け取ってもいいという通知が来ました。

 ・いまデイサービスの活動を
  していますか?

いまは一般企業と協力・提携をしています。

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例えば展示車両の洗車だったり、文房具の社員研修で、

  認知症の人であっても
   使いやすい文房具はどれか

あるいは

  認知症の当事者は
   どう思っているのか

といったことで、講師の役を依頼されたりしています。

また、給食センター等に卸すタマネギの皮をむくという仕事を、問屋からの依頼という形でやっています。

営業の手伝い、野菜の配達の手伝いなども行っています。

 ・(次は仕事を発注する側の声です)

最初はできるのかな? と思っていましたが、実際に仕事をしてもらうと、普通の人と同じでした。

元気もあるし、評判も良かったです。

 ・ボランティアの活動は
  何をしていますか?

ボランティアで紙芝居の読み聞かせをしています。

そして最後に子供たちに、

  実はおじちゃんも
   認知症なんだよ

と打ち明けます。

すると子供たちは、他人事だった認知症を突然身近に感じ始めます。

  「おじちゃんはみんなの顔と名前を覚えることができないけど、
   みんなはおじちゃんの顔と名前を覚えられるよね。

   街で会ったらおじちゃんにこんにちはと声をかけて欲しい
   もしかしたらその時、おじちゃんは道に迷っているかもしれない
   でも、君たちからあいさつがあったら、とてもほっとするから」

こんなふうに、自然とあいさつのできる地域を目指しています、そしてこんなボランティア活動をやっています。

この講義を受講して

仕事をする、あるいは誰かの役に立つというのは、人の本質的な欲求なんだろうと思います。

そして若年認知症のような若い人の場合は特に強く感じるのだろうと思います。

でもこの、

  「誰かの役に立ちたい」

という欲求は若い人にだけとは限りません。2009年12月の「クローズアップ現代」というテレビ番組、

  共生型介護

にもあるように、小さい子どもと障害者と認知症のお年寄りが一緒に暮らしていると、

  認知症で何もできなかった
   はずのお年寄りが
  生き生きとした顔で、
   障害者の食事を介助する

あるいは

  認知症で立てなかったはずの
   お年寄りが、
  小さな子どもの呼びかけで
   歩き始め、階段をも登る

などがありました。

そういった意味でも、認知症の人が社会に参加できることは、生きるモチベーションとしてとても有効なんだろうと思います。

そして最後の子どもたちへの「おじちゃんを見かけたら声をかけて」のお願いは、子どもたちにとっても嬉しいお願いに違いありません。

参考

  (認知症と生きる 当事者から見る認知症[13章A] 歴史編)
  (認知症と生きる 当事者から見る認知症[13章B] 本人編1)
  (認知症と生きる 当事者から見る認知症[13章C] 本人編2)
  (認知症と生きる 当事者から見る認知症[13章D] 本人編3)
  (認知症と生きる 当事者から見る認知症[13章E] 本人編4)

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