認知症と生きる 認知症の医学的な特徴1、原因疾患

放送大学・「認知症と生きる」第2章

  認知症の医学的な特徴① 様々な疾患
  認知症と生きる 認知症の医学的な特徴1[2章C] 原因疾患
講義内容の整理

ちょっと面倒ですが認知症の定義からです。

  「脳の障害によって生ずる持続的な認知機能の障害であり、
   それが社会的あるいは日常的な生活を行っていく上で、
   明らかに障害をきたすもの」

ということです。

認知症といっても、その原因は様々です。そしてその原因によっては改善できる場合と改善が難しい場合とがあります。

認知症の症状が見られても、その原因が治療可能なものならば、できるだけ早期に発見して治療をすることが大切なことですね。

ここでは認知症の原因疾患を挙げてみます。

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治療困難な原因疾患

治療が困難な認知症の原因疾患とは、「神経変性疾患」と呼ばれる認知症で、アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭葉変性症、パーキンソン病、進行性核上性麻痺、ハンチントン病などが含まれます。

 ・アルツハイマー型認知症
 ・レビー小体型認知症
 ・前頭側頭葉変性症

 ・パーキンソン病

錐体外路と呼ばれる、脳から運動の指令を抹消に伝える神経路に何らかの異常があり、手足のふるえや身体のこわばり、歩行困難などが生じます。
高齢になると認知症症状も合併します。

 ・進行性核上性麻痺

パーキンソン症候群の一つとされますが、パーキンソン病よりも速く進行し、症状も様々です。60歳台の男性に多く発症が見られます。

 ・ハンチントン病

優性遺伝形式の疾患です。不随意運動、筋トーヌスの異常(筋硬直など)、認知症症状などを示します。
当初は注意集中力、意欲の障害が目立ちます。

治療がある程度可能な原因疾患

 ・血管障害による認知症

代表は血管性認知症で、脳梗塞などによって周囲の神経細胞が障害されて、脳の機能が低下します。
人により障害される部位が異なるため、認知機能の低下には個人差がありますが、めまい、しびれ、麻痺などの症状を伴うことが普通です。

 ・感染性疾患による認知症

治療されていない、あるいは不十分な治療の梅毒感染者に発症する認知症です。脳に炎症を起こすことで、いろいろな精神・神経症状が現れます。

ヘルペスウイルスによるヘルペス脳炎や、プリオンという核酸を持たないタンパク質が感染することで発症するプリオン病の代表的なものとしてのクロイツフェルトーヤコブ病などがあります。

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 ・脳外科的疾患による認知症

 ・・慢性硬膜下血腫

転倒や頭部の外傷経験のある人に発現することが多く、硬膜下に血腫ができることで、脳を物理的に圧迫してしまいます。高齢者やアルコール依存の患者の場合にみられることが多いです。

 ・・正常圧水頭症

脳脊髄液の流れが悪くなることで、作られた脳脊髄液が脳にどんどん溜まってしまう病気です。
歩行障害、失禁、認知症症状の3つの症状が現れます。くも膜下出血、脳内出血などの後に多くみられます。

 ・・脳腫瘍による認知症

腫瘍が脳組織を圧迫、破壊し、脳脊髄液や脳血流の循環に支障をきたします。
その発症部位によって、記憶障害、理解・判断力の低下がみられます。

 ・・外傷性脳障害

交通事故や脳挫傷などで脳機能が損傷されることです。知覚障害、記銘力障害、注意障害などがあります。

 ・内分泌代謝性疾患による認知症

 ・・甲状腺機能低下症

甲状腺から分泌される甲状腺ホルモンの低下で起きます。徐脈、低血圧、嗄声などがみられ、知的機能の低下や認知症の症状がみられることもあります。

 ・・ビタミンB12欠乏症

ビタミンB12は体内には存在しないけれども、通常の食生活では欠乏症にはなることはありません。代表的な例としては、胃切除後の極端な菜食主義などに起こることがあります。(ビタミンB12は動物性たんぱく質に含まれる)
意識障害、記憶障害、末梢神経障害などが起こります。

 ・・ビタミンB1欠乏症

低栄養下でのアルコール依存症患者にみられ、内斜視、歩行困難などの失調状態、意識障害がみられる。

 ・・ペラグラ脳症

ニコチン酸欠乏症による胃腸障害、口内炎、下痢などとともに、精神症状も発現します。
低栄養状態のアルコール依存症患者や拒食症患者などで発現されるようです。

 ・精神作用物質・薬物などによる認知症

 ・・アルコール性認知症

長期のアルコール依存症患者が認知症症状を伴う場合のことです。
ペラグラ脳症はビタミン欠乏症などによる認知症と同様の症状を起こすことが多いです。

 ・・ベンゾジアゼピン系薬物による認知症

抗不安薬、睡眠薬として用いられているベンゾジアゼピン系薬物によって、特に高齢者などは失調による転倒、健忘などの記憶障害が誘発されやすいと言われます。
この場合は薬物を中止すれば認知症の症状もなくなります。

参考

  (認知症と生きる 認知症の医学的な特徴1[2章A] 中核症状)
  (認知症と生きる 認知症の医学的な特徴1[2章B] 周辺症状)
  (認知症と生きる 認知症の医学的な特徴1[2章C] 原因疾患)

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