放送大学・「認知症と生きる」第2章
認知症の医学的な特徴① 様々な疾患
認知症と生きる 認知症の医学的な特徴1[2章B] 周辺症状
講義内容の整理
ちょっと面倒ですが認知症の定義からです。
「脳の障害によって生ずる持続的な認知機能の障害であり、
それが社会的あるいは日常的な生活を行っていく上で、
明らかに障害をきたすもの」
ということです。
「脳の障害で日常生活が難しくなること」ということのようですね。
脳の障害の結果としていろんな症状が現れるのですが、大きく分けて
中核症状 と 周辺症状
に分かれるようです。
病気によって直接受ける障害の症状が「中核症状」ですが、その中核症状と周囲の環境が原因でいろいろと起きるやっかいな症状が「周辺症状」と言われます。
中核症状を改善することは現在はとても難しいと言われていますが、周辺症状は適切なケアによってずいぶん改善ができるようです。
ここでは、この「周辺症状」についての話です。
認知症の周辺症状
中核症状がほとんど全ての認知症の人に認められるのに対して、周辺症状は人によってまちまちです。
そして症状の認められ方は、中核症状の進行に比例しません。症状が進行すると認められなくなる場合もあります。
この周辺症状のことを、心理的な症状と行動上の症状とを合わせて「認知症の行動・心理症状」(BPSD)と言います。
周辺症状としては、妄想、幻覚、誤認、抑うつ、アパシー、不安、徘徊、攻撃性、焦燥、介護に対する抵抗、脱抑制、夕暮れ症候群があります。
次は、このそれぞれの症状についてです。
認知症の中核症状の内容
・妄想
妄想は「訂正不能な誤った確信」のことです。アルツハイマーの典型としては、「物盗られ妄想」があり、その他にも、「ここは自分の家ではない」、「自分は見捨てられている」、「配偶者が不義を働いている」などがあります。
・幻覚
幻覚には、幻視、幻臭、幻聴がありますが、認知症の周辺症状としては幻視が大半です。
「自分でも変だと思うのですが、棚の上に子供が座っている」などと訴える人もいます。
・誤認
幻覚が何もないのに見えるのに対して、誤認はものを誤って認識してしまうことです。
「現実にはいない人が家の中にいる」、「鏡の中の自分の姿が分からない」、「知っている人が、いろんな人に変装している」などです。
・抑うつ
アルツハイマー型の認知症の場合は最も現れやすいBPSDです。孤立、引きこもり、食欲低下、拒絶などの様子が現れます。
・アパシー
無表情で喜怒哀楽がなく、情緒的反応が乏しくなった状態です。うつ病と間違われやすい症状ですが、抑うつ気分や悲哀感などは伴いません。
・不安
認知機能が低下してくることで、将来のことや健康のことなど種々の不安が生じてしまいます。この不安が原因で抑うつ、徘徊などの行動が引き起こされることもあります。
・徘徊
徘徊は介護する人にとっては最も大変な行動のひとつです。徘徊には無目的の場合もありますが、何らかの目的を持っている場合(出口を探すなど)も多いです。背景には見当識障害、不安、退屈などがあることがあります。
・攻撃性
専門病院への入院など、専門家の対応が必要になることも多い症状です。妄想が関係していたり、周囲との意思疎通の困難さなどが原因のこともあります。
・焦燥
「いらいらする」、「いてもたってもいられない」、「訴えをくり返す」、「動き回る」などです。この症状は必ずしも認知症が原因とは限らないこともあります。
・介護に対する抵抗
服薬、日常生活の援助、食事や入浴介助などへの拒絶があります。介護する人と認知症の人との間のコミュニケーションが困難となり、過剰な干渉と感じていることもあります。認知症の悪化に伴って頻度は増加します。
・脱抑制
脱抑制は衝動的で不適切な行動をしてしまうことがあります。社会的逸脱行為、号泣、性的逸脱行為、衝動買い、万引きなどの抑制の利かない行為が現れたりします。
・夕暮れ症候群
夕暮れ症候群とは、午後から夕方にかけて周辺症状(「認知症の行動・心理症状」(BPSD))の出現が増えることを言います。一日のリズムが乱れてしまうことと環境要因などが関係して起こるようです。
参考
(認知症と生きる 認知症の医学的な特徴1[2章A] 中核症状)
(認知症と生きる 認知症の医学的な特徴1[2章B] 周辺症状)
(認知症と生きる 認知症の医学的な特徴1[2章C] 原因疾患)