認知症と生きる、人とのかかわり③ 生認知症の人と権利・偏見とイメージ

放送大学・「認知症と生きる」第11章

  認知症の人とのかかわり③ 認知症の人と権利
  認知症と生きる 認知症の人とのかかわり③[11章C] 偏見とイメージ

講義内容の整理

認知症の人の拘束に警鐘を鳴らした「福岡宣言」の後も、なかなか身体拘束の問題はなくならないのが実情のようです。

臨床の場面でどのような身体拘束の問題があるのかの実情と理由を追及します。

理由のひとつとしては、認知症の人に対する歪んだイメージと偏見が挙げられています。

認知症による障害のため、自分の思いをうまく言葉にできなくなってしまうことも理由のひとつと思われます。

ここでは、これらの認知症の人への偏見を作り上げた理由、あるいはその払拭についての勉強です。

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認知症の人への偏見を作り上げた理由

認知症の人への偏見を作り上げた理由として、エイジズムと呼ばれる年齢への差別や偏見が挙げられます。

核家族化や少子化あるいは高齢者の雇用制限などによって、高齢者が孤立化してしまったり、認知症や寝たきりなどが増加することは、若者にとって恐怖となります。

このことが、

  高齢者をめぐる6つの神話

などの、高齢者に対してのマイナスのイメージにつながってしまいます。

こうした時代背景や高齢者の外観などから、高齢者への思い込み、つまり

  エイジズム(年齢への差別や偏見)

が起き、高齢者虐待が増えてきたと想像できます。

これは、マスコミその他の様々な場面で、高齢社会の暗いイメージが特に強調された結果として、6つの神話のようなイメージが形成されたのでしょう。

臨床場面での身体的拘束問題

このエイジズム・偏見から、臨床場面でも身体拘束のような問題が発生しています。

これは1998年の福岡宣言を受けて、1999年に指定介護老人福祉施設その他の運営基準に盛り込まれた、身体拘束の禁止規定です。


徘徊しないように、転落しないように、自分で降りられないようにと、さまざまな理由によって、ひもで動けないように縛られてしまう、あるいは柵で囲われてしまうといったことや、

点滴や経管栄養等のチューブを抜かないようにと、ひもで縛って動けなくされる、あるいは手を使えなくされてしまうなどです。

その他にも、ベルトだったり特殊なイスだったり、つなぎの服だったりと、多くがいろいろな方法で自由を奪われる処置となっています。。

全部で11項目ありますが、どれも自分がされる立場で考えたら、とても恐ろしいことです。

そして、この対象となる人の多くは、

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  ・自分の意思を訴えられない
  ・判断できない
  ・相手の言葉が理解できない

などの認知症高齢者と言えるでしょう。

ちなみに、この身体拘束の問題はアメリカでもあって、1991年の調査で、3割の利用者が身体拘束を受けていたため、禁止規則が設けられました。

また、イギリスでは1980年代~1990年代と、20年間に渡って身体拘束の規制をかけた結果、身体拘束がなくなったとのことです。

認知症の人に関する歪んだイメージの払拭

「高齢者の頭脳は、若者のように明敏ではない」、あるいは、「高齢者は誰も同じようなものである」、などの、高齢者や認知症の人に対する歪んだイメージの払拭は、どうするのがいいでしょうか。

①自分自身をよく知り、高齢者の立場に立てる ②加齢と認知症の理解をし ポジティブな高齢者観を創造する ③「問題行動」ではなく 認知症を病気として理解する

 1.自分自身をよく知り、高齢者の立場に立つ

高齢者、認知症ケアを専門的な視点で行うために、まず大切なことは、

  ケア提供者が、自分自身をよく見つめ
  よく分かり、自分自身を大切にしていくこと

自分と自分の体を通して高齢者や認知症の人を知る、そのことによって初めてケアの重要性が理解できます。

 2.加齢と認知症の理解をし、
   ポジティブな高齢者観を創造する

人間の体の細胞分裂をする寿命はおおよそ100年と言われ、さらに歳をとるごとに回数が減ってしまいます。

そのため高齢になると全身の細胞が減少し、各臓器が委縮を始め、機能が低下します。

そしてこの変化は、誰も途中で止めたり戻したりはできません。そして誰もが同じ道を辿って衰退してゆきます。

高齢者であっても認知症であっても、それぞれの長い人生を生きてきた人生の先輩として、常に成長を目指している人として、ポジティブに高齢者を捉えることで、マイナスのイメージは払拭が可能でしょう。

 3.「問題行動」ではなく、
   認知症を病気として理解する

認知症は病気であって、頭が変になったのでも、おかしくなったのでもありません。

例えば一般的な病気の患者が

  「気持ちが悪い」、
  「吐きそうだ」

などと訴えた場合には、ケアする人は同情の念を持って声をかけるでしょう。

ところが、認知症の人がご飯を食べたことを忘れて

  「ご飯まだですか?」
  「朝から何も食べさせて
    もらってない」

などと訴えると怒られてしまいます。

こういった病気による差をなくすためにも、認知症という病気を正しく理解することが重要となります。

参考

  (認知症と生きる 認知症の人とのかかわり③[11章A] 認知症の人と人権・虐待の現場で)
  (認知症と生きる 認知症の人とのかかわり③[11章B] 認知症の人と人権・認知症と人権)
  (認知症と生きる 認知症の人とのかかわり③[11章C] 認知症の人と人権・偏見とイメージ)
  (認知症と生きる 認知症の人とのかかわり③[11章D] 認知症の人と人権・虐待と対応策)
  (認知症と生きる 認知症の人とのかかわり③[11章E] 認知症の人と人権・福岡宣言の後)

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