認知症と生きる、人とのかかわり③ 生認知症の人と権利 虐待と対応策

放送大学・「認知症と生きる」第11章

  認知症の人とのかかわり③ 認知症の人と権利
  認知症と生きる 認知症の人とのかかわり③[11章D] 虐待と対応策

講義内容の整理

認知症という特有の病気のために、その権利を脅かされてしまう事件ということでの、

  「虐待」

にがテーマです。

虐待とはいっても、いったい何が虐待とされるのか、という虐待の定義、

また虐待の種類にはどのようなことが含まれるのか、という虐待の種類、

そして、高齢者虐待を防止するための対応策として、どのようなことが考えられるか、といった内容が今回のテーマです。

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高齢者虐待の防止

高齢者虐待防止法は2006年4月から施行されていて、

  「高齢者虐待の防止、
   高齢者の擁護者に対する
   支援等に関する法律」

とされています。

この法律
は、高齢者の虐待防止だけでなく、高齢者の擁護者に対する支援も含まれた法律ということです。

  認知症の人と人権・虐待の現場で

での例にもあったように、虐待される側だけでなく、虐待する側もつらいのだという事実もあります。

そのため、虐待する側も支援の対象となっています。

その「虐待」の定義です。

 虐待の定義

  「65歳以上の高齢者に対する殴るけるなどの
   身体への暴行や、食事を与えないなどの長時間の
   放置、無視や暴言などで心理的外傷を与える行為、
   性的虐待、本人の承諾なしに年金などの財産を
   奪ったり、財産を家族らが勝手に処分するなどの
   経済的虐待」

とされています。

また虐待は5つの種類に分けられています。

1.身体的虐待、2.心理的虐待、3.性的虐待、4.経済的虐待、5.介護・世話の放棄・放任、の5つです。

「1.身体的虐待」は傷やあざ、痛みを与える暴力的な行為や、「外部との接触を意図的、継続的に遮断する行為」とされます。

平手打ち、つねる、殴る、蹴る、薬を過剰に飲ませる、あるいは身体的拘束がこれにあたります。

「2.心理的虐待」は脅しや侮辱のような言葉や態度、また無視や嫌がらせなどで、精神的、情緒的に苦痛を与えることを言います。

例えば、排泄の失敗をからかったり、人前で話して高齢者に恥をかかせたり、悪口を言ったりすることをいいます。
侮辱を込めて、子どものように扱うことも心理的虐待にあたります。

「3.性的虐待」は本人との間で合意がされない中での、あらゆる形態の性的な行為や強要のことです。

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これは、日常生活の中で排泄の失敗のことで、懲罰的に下半身を裸にして放置することだったり、性器への接触やセックスの強要などです。

「4.経済的虐待」は本人の合意なく財産や金銭を使用すること、また本人の希望する金銭の使用を理由なく制限することです。

これは、年金を渡さないこと、あるいは生活費に必要なお金を渡さない、使わせないことだったり、預貯金を勝手に使ってしまう状況などです。

「5.介護・世話の放棄・放任」は介護や世話をしている家族が、放棄・放任し、高齢者に悪影響が生じていることです。
これは意図したものかどうかに関わりません。

入浴していないため悪臭がする、あるいは髪が伸び放題だったりとかが挙げられます。

高齢者虐待への対応

 ・認知症の鑑別診断

認知症の人は他の身体的疾患(骨折、肺炎など)を併発していることもあり、それらの診断とともに、認知症の鑑別診断を受けることが第一となります。

 ・介護者の正しい理解

介護する人が認知症を正しく理解しないまま認知症の人の対応をしようとすると、認知症の人への不満や虐待につながりやすくなってしまいます。
そのため、認知症を正しく理解する必要があります。

 ・家族の認識

認知症の重症度と介護の困難さとは比例しません。
家族にも認知症に対する認識を正しい認識をしてもらうことも大切です。

地域の認知症に関する勉強会に参加する、関連の本を読む、介護教室や家族会に参加するなどが望まれます。
他の家族の様子を知ることは、適切な介護のためにはとてもいいことと思われます。

また、介護する側の人の健康管理も大事です。定期的な検診なども大切と言えます。

そして、担当のケアマネジャーなどと相談して、公的サービスの有効活用を考えることも大切と言えるでしょう。

 ・環境

介護する側の人と介護する側の人との、もともとの人間関係が悪いと、虐待が起きる可能性が高まると言えます。
普段からの人間関係をよくする努力も大切です。

また、近隣には認知症であることを隠したいという思いがあることが多いのですが、まずは知ってもらうことから始め、愚痴を聞いてもらうあるいは共感してもらうなどの環境があれば、虐待防止にも有効でしょう。

 ・経済状態

経済状態も悪ければ虐待につながる可能性が高まってしまいます。

在宅介護は医療保険や介護保険の自己負担だったり、おむつ代、通院費用など多額の費用がかかることにもなります。
行政やケアマネジャーなどに相談をして、制度を活用することを考える必要もあるかもしれません。

 ・介護保険

介護保険サービスを利用しない人がかなり多くいます。そしてこうした場合に虐待が生じる事例が少なくありません。

参考

  (認知症と生きる 認知症の人とのかかわり③[11章A] 認知症の人と人権・虐待の現場で)
  (認知症と生きる 認知症の人とのかかわり③[11章B] 認知症の人と人権・認知症と人権)
  (認知症と生きる 認知症の人とのかかわり③[11章C] 認知症の人と人権・偏見とイメージ)
  (認知症と生きる 認知症の人とのかかわり③[11章D] 認知症の人と人権・虐待と対応策)
  (認知症と生きる 認知症の人とのかかわり③[11章E] 認知症の人と人権・福岡宣言の後)

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