認知症と生きる 認知症の医学的な特徴3、機能テスト

放送大学・「認知症と生きる」第4章

  認知症の医学的な特徴③
  認知症と生きる 認知症の医学的な特徴3[4章C] 機能テスト

講義内容の整理

認知症の診療ではさまざまな神経心理学的検査(心理テスト)が行われます。

もちろん、このテストによって認知症が診断できてしまう、といったものではありませんが、非常に便利なので、実際の診療の場面で使われることがよくあります。

テストの範囲は「記憶」に関するものだけではなく、言語、動作など、さまざまな領域でのテストが行われます。

ここで紹介されているのは、それらの心理テストの一部です。

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知的機能のテスト

知的機能のテストにもたくさんのテストがあります。

 ・HDS-R
  (長谷川式簡易知能評価スケール改訂版)
 ・MMSE
  (Mini-Mental State Examination)
 ・WAIS-Ⅲ
  (Wechsler Adult Intelligence Scale 3)
 ・Kohs立方体組み合わせテスト
 ・BGT(ベンダー・ゲシュタルト・テスト)

これらは知的機能全般について検査をするテストで、長谷川式簡易知能評価スケールは日本で開発されたものですが、ほぼ同様なものにMMSEがあります。
MMSEは非常に簡易なものとなっていて、10分から15分程度でテストができるほどです。

WAIS-Ⅲは、細かく調べることができる代わりに、時間を非常に要します。

Kohs立方体組み合わせテストは、立方体を組み合わせることによって知的機能を調べるテストです。またベンダー・ゲシュタルト・テストでは、模様を模写することで知的機能を調べます。

長谷川式簡易知能評価スケール

長谷川式簡易知能評価スケールは日本では幅広く用いられているテストです。

1 お歳はいくつですか?(2年までの誤差は正解) 0 1 年齢
2 今日は何年の何月何日ですか? 何曜日ですか?
(年月日,曜日が正解でそれぞれ1点ずつ)



曜日
0 1
0 1
0 1
0 1
日時の
見当識
3 私たちが今いるところはどこですか?
(自発的に出れば2点、5秒おいて 家ですか?病院ですか?施設ですか?の中から正しい選択をすれば1点)
0 1 2 場所の
見当識
4 これから言う3つの言葉を言ってみてください。後でまた聞きますのでよく覚えておいてください。
(以下の系列のいずれか1つで、採用した系列に〇印をつけておく)
1:)  a)桜 b)猫 c)電車
2:) a)梅 b)犬 c)自動車
0 1
0 1
0 1
3つの
言葉の
記憶
5 100から7を順番に引いてください。(100-7は?、それからまた7を引くと? と質問する)
(最初の答えが不正解の場合、打ち切る)
93
86
0 1
0 1
計算
6 私がこれから言う数字を逆から言ってください。
(6-8-2, 3-5-2-9を逆に言ってもらう)
(3桁の逆唱に失敗したら打ち切る)
2-8-6
9-2-5-3
0 1
0 1
数字の
逆唱
7 先ほど覚えてもらった言葉をもう一度行ってみてください。
(自発的に回答があれば各2点、もし回答がない場合、以下のヒントを与え正解であれば1点)
a)植物  b)動物  c)乗り物
植物
動物
乗物
0 1 2
0 1 2
0 1 2
3つの
言葉の
遅延再生
8 これから5つの品物を見せます。それを隠しますので、何があったか言ってください。
(時計、鍵、タバコ、ペン、硬貨など必ず相互に無関係のもの)
0 1 2
3 4 5
5つの
物品
記銘
9 知っている野菜の名前をできるだけ多く言ってください。
(答えた野菜の名前を右欄に記入する。途中で詰まり、約10秒待っても答えが出ない場合は打ち切る)
0-5=0点、 6=1点、 7=2点、 8=3点、 9=4点、 10=5点
0 1 2
3 4 5
言語の
流暢性

これは9個の項目で30点が満点となっています。

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その内容は、年齢、日時に関する見当識、場所に関する見当識、そして3つの言葉を言ってもらうテストでは、一度言ってもらうだけではなく、別のテストを挟んだ後で再度思い出してもらいます。

後は簡単な計算、数字の逆唱、先ほど覚えてもらった言葉を言ってもらう遅延再生、物品呼称と覚えること、最後は言語の流ちょう性という項目です。

得点としては20~21点が判断の目安となり、20点以下になると認知症の可能性が高いということになります。

しかし、例えばうつ病の人の場合や、せん妄の人の場合などでも点数は低くなるので、このスケールの点数だけで判断することはできません。

ある程度の目安にはなったとしても、正確な重症度が分かるというわけではありません。ただし、情報としては必要なものと言えるでしょう。

ですので、ここで大切なのは何点だったかということよりも、9項目のうちのどの項目に障害が見られるのかということを知ることが大切と言えます。

図形模写テスト

その他にも、例えば三角、四角など、あるいは五角形や立方体などの図形を描いてもらうというテストがあります。

これは左側の立方体をアルツハイマー型認知症の人に描いてもらうと、右側のように立方体には見えない図を描いてしまうという結果になります。(図はサンプルです)

アルツハイマーの人の場合は、ものを立体的に把握する「視空間認知機能」と言われる機能に障害があるため、立体の模写がうまくいかないということも分かります。

参考

  (認知症と生きる 認知症の医学的な特徴3[4章A] 診断の進め方)
  (認知症と生きる 認知症の医学的な特徴3[4章B] 神経学的診断)
  (認知症と生きる 認知症の医学的な特徴3[4章C] 機能テスト)
  (認知症と生きる 認知症の医学的な特徴3[4章D] 血管性認知症)
  (認知症と生きる 認知症の医学的な特徴3[4章E] レビー小体型認知症)

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