認知症と生きる、人とのかかわり④ コミュニケーション あり方

放送大学・「認知症と生きる」第12章

  認知症の人とのかかわり④ コミュニケーション
  認知症と生きる 認知症の人とのかかわり④[12章A] あり方

講義内容の整理

ここでは認知症の人とのコミュニケーションのあり方についてがテーマです。

認知症になると、なかなかコミュニケーションをとることが難しくなってきます。

ではどうすれば認知症の人とコミュニケーションを取ることができるのか、

認知症の人の持てる力を引き出せるかかわり方や支持的なかかわり方のあり方についての話です。

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劇団いくりの寸劇より

普段はデイサービスで認知症の人のケアにあたっている看護師や介護士の方たちが演じる劇団の寸劇です。

  「ここに置いてあった
   魚がなくなった!」

と認知症の人が訴える話です。

舞台はある家の茶の間にお嫁さんがいます。そこへおばあさんが来るのですが、

・和ばあ

  「佳美さんよ
   ここにあった魚
    知らねえけ?」

・お嫁さん

  「魚?
   魚なんてないですよ」

・和ばあ

  「いや
   ここに置いといたんだよ」

魚はもともとなかったので、お嫁さん一生懸命「魚なんてありませんでした」と説明するのですが、おばあさん納得しません。

「置いといたんだよ!」、「知りませんよ!」、「さっきウオマサで買って来たんだ」、「そんなところまで行けるわけないでしょ」なんて、言い合いがまた始まってしまいました。

おばあさんも必死です。「誰かにあげたのか?」、「ネコでも持ってったのか?」、「ここにしまったか?」なんてタンスを開けたりしてます。

しまいには、

・和ばあ

  「これ、佳美さんよ
   何だか腹 膨らんでるけども
   一人で食ったんじゃあるめえ?」

おばあさん「ここには、あんたしかいなかったんだからね」と、とうとうお嫁さんを疑ってしまいました。

・和ばあ(独り言)

  「ここにはね、泥棒がいんだよ」

と言ってトイレに立ちました。

そこへ息子が「いやいや 疲れた」なんて言いながら帰ってきました。

お嫁さんは息子(夫)にお茶を入れながら、おばあさんとの「魚がなくなった」という騒ぎの顛末を話します。

いつもお嫁さんが泥棒ということにされてしまっているようです。

話しているところにおばあさんが戻ってきます。おばあさん、息子の顔を忘れてしまって、「あんた どちらさん?」なんて聞いてしまいました。

・息子

  「お袋よ
   今日は魚がねえって
   騒いだんだって?」

・和ばあ

  「魚? 魚なんか知らねえよ」

  「いやあ それよりも
   ここにあった大根 知んねえけ?」

いつの間にか、無くなったのは魚じゃなくて、大根になってしまったようです。

そして、おばあさんが大根を探しに行って戻って来ると、お嫁さん、何か認知症の人の扱い方を教えてもらったことを思い出したようです。

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・お嫁さん

  「おばあちゃん
   ご苦労様でしたね

   おばあちゃんが
   引いといてくれた大根は
   ちゃんと私が軒の下に
   置いといたから大丈夫ですよ」

・和ばあ

  「あれ そうけ?
   んじゃ ちょっと見てくっから」

・息子

  「いやいや
   お袋 今日はもう暗いから
   明日でも
   明るくなってからでもいいべ?」

・お嫁さん

  「明日 一緒に見にいきましょ」

・和ばあ

  「ああ そうけ?
   んじゃ そうすっか」

大根が無くなったという騒動の方は、無事おさまったようでした。

物盗られ妄想

お嫁さんがこの寸劇の意味を解説してくれました。それによると、

このおばあさん(和ばあ)の症状は

  「物盗られ妄想」

といいます。

そして、盗った犯人は大抵の場合は、いつも身近でケアをしてくれる人ということになるようです。

この物盗られ妄想は、もともとないものを「無くなった」、「確かにここにあった」などと言われたり、「盗られてしまった」などと言われたりすることです。

これは病気による「記憶障害」のためで、たとえば

  財布や通帳が無くなった

という時には、

  一緒に探すといい

と言われています。

ただ、一緒に探すのはいいのですが、見つけた時に

  ほら、
  ここにあったでしょう

と自分から出してしまうと、

  やっぱり
  あなたが盗ったんだね

と言われてしまうので、そういうときはしまっておきそうな場所におばあちゃんを誘導して、

  おばあちゃん自身に
   見つけてもらう

ということがいいということでした。

あとは、「大根知らねえか?」とか「魚 知らねえか?」とか、ないものを言われた時は、

  「おいしそうだったから
   イシイさんちにあげちゃったの」

  「大根はちゃんとしまってあるから
   心配ありませんよ」

などと、安心できるように言葉をかけるのがいいとのことでした。

そしてその間に、おばあちゃんの得意な茶わん洗いや洗濯たたみをやってもらっていると、

記憶障害があるので、魚や大根のことを忘れてしまってもらうのもいいそうです。

あ、その時

  ちゃんと得意なことを
   やってもらうこと

ということでした。

参考

  (認知症と生きる 認知症の人とのかかわり④[12章A] コミュニケーション・あり方)
  (認知症と生きる 認知症の人とのかかわり④[12章B] コミュニケーション・手段)
  (認知症と生きる 認知症の人とのかかわり④[12章C] コミュニケーション・技術)
  (認知症と生きる 認知症の人とのかかわり④[12章D] コミュニケーション・事例)
  (認知症と生きる 認知症の人とのかかわり④[12章E] コミュニケーション・実践)

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