認知症と生きる 認知症の医学的な特徴3、診断の進め方

放送大学・「認知症と生きる」第4章

  認知症の医学的な特徴③
  認知症と生きる 認知症の医学的な特徴3[4章A] 診断の進め方

講義内容の整理

認知症を引き起こす病気の中で最も多いのが「アルツハイマー病」ですが、

第4章ではアルツハイマー型認知症以外の認知症の鑑別に必要な要点の話と、さらに「血管性認知症」、「レビー小体型認知症」、「前頭側頭葉変性症」などの、その他の重要な認知症疾患の話です。

初めは認知症診断の進め方をどうするのか、といった話です。

認知症とはいっても、アルツハイマー型認知症以外にも種々あって、さらには治療が可能な認知症もあります。

この治療が可能な認知症を見落とさないためにも、認知症の診断の進め方をしっかり見ていくことは大切なこととなるでしょう。

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認知症診断の進め方

認知症診断の進め方に関する流れ

 a.病歴、理学所見、神経学的診察、日常生活の観察
    ↓
 b.記憶障害を含む複数の認知機能障害
 c.社会・日常生活上の障害
 d.血液検査、画像検査、脳波検査、簡易知能検査など
    ↓
 e.認知症の診断
    ↓
 f.臨床症状、神経心理学的検査
    ↓
 g.原因疾患の診断

最初は問診を中心とした診察から始まり、その中で、記憶障害などの複数の認知機能障害があるか、そしてそれらの障害が、社会生活や日常生活においても障害を引き起こしているかどうかを確認し、

同時に、治療可能な認知症を発見するためにも、血液検査、画像検査、脳波検査、簡単な知能検査などを行います。

血液検査では一般的な赤血球、白血球などの検査以外にも、甲状腺や電解質、カルシウム、血清グルコース、血糖値などを検査します。その他ではビタミンを測ることも大事と言えます。

その他、治療可能な認知症かどうかを知るため、画像検査、脳波検査、あるいは簡易な知能検査などを行って、認知症かどうかの診断に役立てます。

そして、医学的な意味での認知症があると診断された上で、さらに詳しい臨床症状やより詳しい神経心理学的な検査、画像検査などを行って、認知症を生じさせている原因としての病気を診断します。

下は、神経学的診察方法の例です。

  参考 認知症診断に有用な神経学的診察

この「参考」のような診察に基づき、より深い神経症候を診察することになります。

治療可能な認知症

認知症には、治療可能な認知症もあります。発見が早いほど治療の可能性が高まります。

この図にある原因疾患は、認知症のような症状を見せますが、早期に見つかれば治療を施すことで直せる病気です。

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例えば、甲状腺機能低下症については、甲状腺のホルモンを血液検査で測ることができ、またビタミンB12なども血中の測定をすることが可能です。

髄膜炎・脳炎などは髄液検査をしますが、これは背中に針を刺して、脳の脊髄液を取って検査をします。

そして、下の3つの疾患は画像検査を行うことで検査が可能です。

正常圧水頭症が疑われる人に関しては、タップテストと呼ばれる、髄液を一時的に抜くことによって症状が改善するかどうかを調べるテストを行います。

画像検査はアルツハイマー型認知症を中心とする認知症の検査では非常に役立つものですが、一方で非常に早期のアルツハイマー型認知症では、脳の萎縮がほとんど見られないなど、絶対的な検査というわけではありません。

そういう意味では、

  画像検査

はどちらかと言えば、

  「治療可能な認知症を
   見逃さない」

ためにあるとも言えます。

例えば、発見された例として、もの忘れということで病院を訪れた人が、問診の結果「最近転倒して頭を打った」という事実が分かり、画像検査の結果脳の骨と脳との間に血腫がたまっていた、などがあります。(硬膜下血腫)

この場合は、この血腫を取り除くことで改善が可能となります。

同様に、もの忘れということで家族も認知症を疑っていたケースでも、MRI検査の結果脳に大きな脳腫瘍があり、この脳腫瘍によってもの忘れが生じていたというケースもあります。

また、同じもの忘れの症状でも、診察の結果軽度ではあるのですが、歩行障害がみられることで、MRI画像を撮ってじっくりと検査を行った結果、脳に髄液がたまった結果として、髄液が脳を押しつぶしていたということが分かった、というケースなどもあります。

脳に脊髄液がたまってしまうことで、歩行障害や失禁などの症状が現れてしまうという結果にもなります。

これは手術によって、脳脊髄液を取り除くことで改善が可能となります。

薬剤性の認知機能障害の問題

高齢者については、多くの薬を服用しているケースがよくあります。

そして高齢になればなるほど、薬が体内に残りやすくなってきます。

そのため、これらの薬の影響で認知機能障害が起きる可能性にも注意が必要となります。

 ・抗パーキンソン病薬
 ・ベンゾジアゼピン系薬剤
 ・抗コリン作用のある薬剤
   (三環系抗うつ薬、頻尿治療薬など)
 ・抗かいよう薬(H2ブロッカーなど)など
 ・特に多剤併用に注意する

こういった薬の中には、せん妄ほどの意識障害ではなくても、ぼんやりしてしまったり注意力を散漫にさせてしまい、あたかも認知症のような症状に見えるものがありますので、注意が必要です。

たとえば、パーキンソンの薬やベンゾジアゼピン系(安定剤、睡眠剤などに用いられる)、抗コリン系(アセチルコリンを阻害する作用)など、うつ病系の薬だったり、頻尿の治療薬としての抗コリン作用の薬などがあります。

参考

  (認知症と生きる 認知症の医学的な特徴3[4章A] 診断の進め方)
  (認知症と生きる 認知症の医学的な特徴3[4章B] 神経学的診断)
  (認知症と生きる 認知症の医学的な特徴3[4章C] 機能テスト)
  (認知症と生きる 認知症の医学的な特徴3[4章D] 血管性認知症)
  (認知症と生きる 認知症の医学的な特徴3[4章E] レビー小体型認知症)

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