人間が考えることは、いつも自分に都合のいいことのようです。
社会心理学の中に
ポジティブイリュージョン
というものがありますが、これは人間はつい、ものごとを自分に都合のいいように解釈してしまう、という意味ですが、どうやらこれは本能的な思考のようです。
でも、この思考方法のおかげで人間は絶望の淵に陥ることなく、それなりに何とか生きていけるようです。
同時に、都合よく解釈するだけでなく、楽観的に解釈するという傾向もあるようです。
お騒がせして申し訳ありません
誰かが良くないことをやってしまって問題になり、その人がテレビなどで謝罪の会見をする時によく聞く言葉で、
「このたびは、
お騒がせしてしまい、
大変申し訳ありません」
がありますね。この言葉はよく聞く言葉です。
でも、これだと何をどう謝っているのかさっぱり分かりません。
まるで悪いのは騒いでいる周囲の人たちであって、私が代表して謝ってあげてるんだ、みたいにも感じてしまいます。
でも、確かに、自分のどこがどういう風に悪かったのか、なんて言いたくはないですよね。
何とかして誰か、他人のせいにしてしまいたいという気持ちは誰にもあります。
その人の精神衛生上の意味でも、自分の本当の責任からは目を背けたほうがいいのでしょう、それが許されるならばの話ではありますが…
悪いのはあなたでしょう!
人間の自分勝手な考え方というのを、社交ダンスの練習を通じて強く感じたことがあります。
もうずいぶん昔のことですが、ダンス教室で社交ダンスを週に二回ほどのペースで習ったことがあります。
そのダンス教室では、男性は女性の先生にレッスンを受け、女性は男性の先生からレッスンを受けていました。
社交ダンスなので、ダンスは基本的に男性と女性が組んで踊ります。
その教室で私は全くの初心者から社交ダンスを始めたのですが、最初はステップを覚えるだけで精一杯でした。
ブルースから始めて、ジルバ、マンボなどで身体を動かすことに慣れて行き、少しするとワルツとタンゴの2つの種目が中心になりました。
何とかダンスパーティーでカッコいいところを見せることができるまで、と思ってやっていたらいつの間にか半年が経過していました。
その頃になると何となく先生とはそれなりに踊れるムードになってきました。ちょっとだけ自信がついてきたころのことでした。
ところで、
その教室では何故か生徒同士の練習を勧めていたのでした。(普通は禁止の場合が多かった気がします)
半年ぐらいして、「俺もうまくなったかな}なんて少しずつ自信をつけたころ、男性の先生に
こちらの生徒さんと
踊ってみなさい
と言われたのでした。
女性の方も私と同じで、始めてから半年ぐらいの人でした。もちろん、その人も先生とはいい感じで踊れていました。
私はちょっとだけ自信を持ちながら、その女性と組みます。ホールドしました。
音楽に合わせて
スタート!
しようとしたのですが、
まったく動かない!
驚きました。今にして思えば、男性がリードし女性がフォローする、この私(男性)のリードが全く伝わっていなかったんですね。
でも当時はそんなことは分かりようもありませんでした。
同じ教室で同じステップを習っていたので、「このステップで行きましょう」と声で合わせて、何とか踊るマネみたいな感じでごまかしたのですが、先生にはとっくに分かっていました。
ただ瞬間、私が感じたことは、私は
先生とのレッスンはできている
でも、この人とは踊れない
きっとこの人が下手なんだ
恥ずかしながら、こんなことを感じてしまいました。
でもそのうち気づきました。
相手の女性はきっと、
先生とのレッスンはできている
でも、この人(私)とは踊れない
きっとこの人(私)は下手なんだ
と、口には出さなくても思っていたんだろうな! ということでした。
どちらかがもっと上手ならばもっと上手に踊れる、というのが本当のところだったんでしょう。
でも、そんな目で他のカップルたちを見ていたら、うまく踊れないときに、
自分がどう動けばいいか
ということよりも
相手がどう動けばいいか
を優先して考えてしまうことがずいぶんあるように感じたのです。
自分は普通に踊っている
でも、うまく踊れない
組んでいる相手が悪い!
と考えてしまうことが何と多いことか! と感じてしまいました。
でも、これは社交ダンスに限ったことではありませんね。
人間関係に関する多くのことに言えるのではないかと思います。
ついついものごとを自分に都合のいいように解釈してしまい、
私は悪くない、
相手が悪い
という本能的思考が人間にはあるようです。
そして、それは一時的には幸福感を増しますが、長い目でみると問題も多いと思います。
時には冷静に自分の行動を分析することも大事ですね、きっと。