人間には本能があります。いや、動物にも本能はあります。
そして、その本能の数は膨大です。(たぶん)
人間を人間たらしめる本能のひとつに
「自分の意志で」
という本能があります。
誰かの意志通りに動くのはいや、自分のことは自分で決めたいという本能です。
この「自分の意志で」というのは、「指図されたくない」という意味でもありますね。
そしてこの「自分の意志で」というのは、心だけの話ではなくて、「体」でも同じことがあります。
一般に、「防御反射」と言われる反射です。
(注.ここでの内容は個人的意見です)
指図されるのがイヤなのは体も同じ
私がお世話になっている治療院の先生の話で、人間の「防御反射」がありました。
人間は(おそらく動物も)押されたら押し返そうという働きが体にはある、という話でした。
意識的にも、押されたらたいていは押し返そうとしている自分に気づくと思います。
これは意識してのことではなく、体が反射的に押された方に押し返そうとしてしまう反射のことで、無意識での働きです。
そう言えば、相撲ではこのことを利用した技がありました。
呼び戻し
ですね。たしか初代の若乃花だったと思います。
左手でほんの少し相手を投げるふりをした次の瞬間、その反対側の右手で投げます。
これが鮮やかに決まった時、投げられた方は大きく飛んで、ひっくり返っていました。
左手で投げられるそぶりを感じた瞬間に、相手の身体は反射的にその左手に抵抗しようと力を入れてしまうんですね。
ところが実はその反対で、思わず力を入れてしまった方向に投げ飛ばされてしまうので、二人の力が合わさって大きく飛ぶんですね。
あ、先ほどの治療院の先生の場合はこのことをよ~く熟知していますので、患者さんの体を押す必要がある時、
静かに押す
ということでした。普通に押してしまうと、体の押された部分が防御反射を起こしてしまい、押した効果がなくなってしまうから、ということでした。
同じ押されるのでも、普通に押されるのと違って、静かに気づかれないような押され方をすると、防御反射が起きないようです。
誰かに指図されるのはイヤ!
この防御反射は体だけじゃなくて、心にも言えます。
昔のプロボクシングの試合では、1ラウンドごとの合間に可愛い女性が次の回を示す2、3、4、などの番号が書かれたプラカードを持って、リングを一周していました。
そして1週し終わると最後に礼をして引き揚げます。
ところがあるお客さんが、この女性が礼をする直前に、大きな声で
礼!
と叫びました。
場内には笑い声があがっていました。
その直後に女性は礼をすることになるのですが、その女性は
「とても恥ずかしかった!」
と言っていました。
まるで、「礼!」と言われたから礼をしたみたいな雰囲気になっちゃったんですね。
でも、きっと、遊んでいる子供がお母さんに、
「勉強しなさい!」
と言われた時、
「いまやろうと思ってたのに・・・」
なんていう不愉快な気分になるのは、本能的には真実なんでしょうね。
確かに勉強をしようと思っていたんです。でもその前にこのゲームを片付けてから、こっちも片づけて、ところであれはなんだったっけ?・・・
なんて思ってるうちに、お母さんに言われちゃうんですね。
よくあるパターンです。
ところで、ミルトン・エリクソンというアメリカの精神科医で、天才的な催眠技術を持っていた人がやっていたことは、 (ミルトン・エリクソンという人)
「ひたすら待っていた!」
ということのようでした。
治療室の中でのカウンセリング的な会話の間中、ひたすらチャンスを待ち続けたようでした。
そして相手が格好の発言をしてくれた瞬間に、
「なるほど、それは素晴らしい!
いい考えです。
私も考えつかなかったけど、
素晴らしい考えです!」
みたいな感じで逃さず食いつきます。
相手は、別にエリクソンに言われた訳ではなくて、自分から口にした言葉なので反論ができません。
それで相手を鮮やかに誘導してしまう、ということもテクニックのひとつだったようです。
もちろん相手が考えつきそうなヒントは、会話の中でこっそりと入れていたことは間違いないとは思いますが。