認知症と生きる 認知症の医学的な特徴3、血管性認知症

放送大学・「認知症と生きる」第4章

  認知症の医学的な特徴③
  認知症と生きる 認知症の医学的な特徴3[4章D] 血管性認知症

講義内容の整理

認知症を引き起こす病気の中で最も多いのが「アルツハイマー病」ですが、2番目に多いのは日本では「血管性認知症」と言われます。

そして日本では、30年ほど前まではこの血管性認知症が認知症の中でも最も多いとされていました。

血管性認知症は、脳の血管に何らかの異常をきたした場合に起きる認知症です。

一般的には、脳梗塞や脳出血などの脳卒中の発作を起こした後で、おおよそ3ヶ月ぐらいしてから発症すると言われる認知症です。

ここでは、この血管性認知症について、あとはアルツハイマー型認知症との違い、見分け方などを話していきます。

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血管性認知症の特徴

特徴

 ・脳梗塞や脳出血などの卒中発作後、
  3ヶ月~3年以内に発症

 ・高血圧、糖尿病、高脂血症、心疾患等の
  脳血管障害の危険因子および
  脳血管障害の発作の既往

 ・固縮、反射の亢進、バレー徴候などの
  局所神経学的兆候

 ・初期症状として記憶障害が出現する
  というわけでは必ずしもない。
  むしろ実行機能・遂行機能の障害などが
  最初に出現することが多い。

血管性認知症の発症時期は、いくつかの説はありますが、一般的には脳卒中発作の後、約3ヶ月程度後に認知症の症状が現れてきます。

ですので、脳卒中を起こしやすい人だったり、高血圧、糖尿病、高脂血症、心臓の病気などといった、脳血管障害の危険を持ち合わせている人だったり、あとは以前にも脳血管障害の発作の経験のある人には血管性認知症は発症しやすいと言えます。

また、アルツハイマー型認知症と大きく異なる点として、固縮、反射の亢進、バレー徴候といった、何らかの身体的徴候があることが挙げられます。

 ・固縮  : 筋肉が持続的に強くこわばること
 ・反射の亢進:過剰に強く反射する
 ・バレー徴候:上肢や下肢に軽度の
        運動麻痺がある場合に現れる徴候

脳梗塞や脳出血は人によって起こる場所や大きさなどが異なるため、初期症状も皆が同じということではありません。

症状の現れる順番としては、アルツハイマー型認知症の場合のように、記憶障害が初期症状として起きるということではなく、

  記憶障害
  実行機能障害
  遂行機能障害
  言語機能障害
  見当識障害

などの現れ方やその順番が、人それぞれ異なることとなります。

アルツハイマー型認知症との違い

アルツハイマー型認知症と脳血管性認知症との違いは下の図のようになります。

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血管性認知症の場合は脳卒中があるため、通常では病歴、あるいは画像検査で判断ができます。

Hachinskiという人が考えたスコアで、Hachinski Ischemic Score という血管性認知症の様々な特徴を示した表があり、それによると7点以上で血管性認知症の可能性が高まります。

経過に関してアルツハイマー型認知症の場合は、いつとはなしに始まり非常に緩やかに悪化しますが、血管性認知症の場合は脳卒中が起きて、その後に発生するので、また脳卒中は1回だけではなく何回も起きることが多いので、その結果、階段状に悪化することになります。

また血管性認知症の場合、脳卒中のその後の治療がうまくいった場合などには、症状が10年あるいは15年と、それほど進行しないこともあります。

また血管性認知症の場合は何らかの神経症候があるのに対して、アルツハイマー型認知症の場合はこれがなく、身体に異常がみられないまま進行することも判断の基準となります。

血管性認知症の人の場合は、脳の血液循環が悪い人が多く、脳の底の方が小さい梗塞などによって血の巡りが悪くなったような状態(大脳白質病変)などの病変がみられることも多くなります。

この図は、アルツハイマー型認知症と脳血管性認知症との経過の相違です。

左側では症状が発現してからゆっくりと進行するアルツハイマー型認知症の経過の典型例と、

右側では脳血管性認知症の人の場合、脳卒中を起こすタイミングで、ガクッと機能が落ちる様子が示されています。

「80歳男性の症例」の紹介

症例 80歳、男性
現病歴 2~3年前に一度意識を失ったことがある。ひとり暮らしであるが、最近外出もせずに引きこもっていることが多くなった。デイケア参加中に意識消失。救急車にて来院。
経過 来院時、もうろう状態であったが当日夕方には意識清明。血液生化学検査に異常なし。高血圧の既往。神経学的所見として上下肢のしびれ、下肢の筋力低下を認める。病棟内のトイレの場所を間違える。
検査所見 長谷川式簡易知能評価スケール改訂版 19点

来院時にはもうろう状態だったが、夕方には意識が鮮明になった。高血圧および上下肢のしびれあり、病棟内のトイレの場所を間違えるようになった。

というこの例では、脳の画像検査などから、脳の虚血性の発作と思われるとのことでした。

参考

  (認知症と生きる 認知症の医学的な特徴3[4章A] 診断の進め方)
  (認知症と生きる 認知症の医学的な特徴3[4章B] 神経学的診断)
  (認知症と生きる 認知症の医学的な特徴3[4章C] 機能テスト)
  (認知症と生きる 認知症の医学的な特徴3[4章D] 血管性認知症)
  (認知症と生きる 認知症の医学的な特徴3[4章E] レビー小体型認知症)

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