認知症と生きる 認知症の医学的な特徴3、神経学的診断

放送大学・「認知症と生きる」第4章

  認知症の医学的な特徴③
  認知症と生きる 認知症の医学的な特徴3[4章B] 神経学的診断

講義内容の整理

認知症の中で最も多いのはアルツハイマー病ですが、それ以外にも多くの種類があります。

そして、それらの病気の内容を診断するために簡単で有用な方法として、

  日本認知症ケア学会の
 「地域における
  認知症対応実践講座」

が紹介されていました。

そこでは、鳥取大学の教授が道具や器具を使わずに病気の内容を見分けるための方法を挙げてくれていました。

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道具・器具を使わない神経学的診察

次に挙げられているのは、認知症が疑われた人に対して、アルツハイマー型認知症の鑑別除外診断に役立つ方法として挙げられていたいくつかの方法です。

これは、特別な道具を使うこともなく、短い時間で行える手軽な方法です。

 ①歩行障害

対象の人が歩く際の(患者さんが入室する際の)歩行の様子の観察します。

  足を広げて歩く場合

  脳血管性認知症

が疑われます。

脳血管認知症の場合、明らかなマヒがなくてもバランスが悪いため、足を肩幅くらいまで広げてバランスをとりながら歩くことがあります。

 ②ベッドで横になる動作

いったんベッドに座ってもらい、その後ベッドに横になってもらいます。その時、

  ベッドで横になることが難しい
   または時間がかかる場合

  パーキンソン病

が疑われます。

ごく軽度のパーキンソン病の場合は、歩行障害は顕著ではありませんが、パーキンソン病の疑いのある人の場合は、ベッドで横になる動作が難しかったり、時間がかかったりすることがあります。

 ③手首硬直の検査

対象の人に座ってもらって、手首の固縮(筋肉がこわばり固くなる)を見るため、対象の人の一方の手をとって、手首を動かしてみます。(「手首固化徴候」と言われます)

そして反対の手、例えば左手の手首を動かして柔らかさを見ている時は、対象の人に右手を上にあげてもらいます。

この時

  動かしていた手首が
   硬直する

という反応があった場合、このことで、

  パーキンソン病

が疑われます。

 ③手を前に上げる

軽いマヒを見るためのもので、対象の人に座ってもらい、両手をまっすぐ前に伸ばしてもらいます。

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両腕の手のひらを上にして、前方に水平に上げたままにで目を閉じてもらいます。

脳血管認知症で軽度のマヒがある場合には、マヒのある方の手が徐々に下がり始めます。

  一方の手が徐々に下がり始めた場合、

  バレー徴候
  (脳血管性認知症)

が疑われます。

あるいは、両手をまっすぐ前に伸ばしてもらった時、

  手が震える場合

  パーキンソン病

が疑われます。

通常は手の震えを押さえていて分からないことがありますが、こうした検査で分かるようになります。

初期の場合は手の震えは片側性ですが、進行すると両側性になります。

さらに、両手を手のひらを上にしてまっすぐ前に伸ばしてもらっている時、目を閉じてもらいます。

その、手を上げて目を閉じるときに、

  目を閉じた途端に
   手を下ろす場合

  アルツハイマー型認知症

が疑われます。

これは、手を前に上げるということと、目を閉じるという、二つの指示を同時に実行できないことがあるためです。

こうした神経学的診察を試行することで、アルツハイマー型認知症以外の疾患の除外診断に役立てることができます。

構成行為の動作

認知症の疑いのある人に対しての、アルツハイマー型認知症を鑑別するために役立つ構成行為の動作があります。

両手の手のひらを相手に向けて、両手の中指と親指の指先を合わせて、対象の人に真似をしてもらう。

両手の手のひらをいったん相手に向けてから、手のひらを返して自分の方に向け、両手を交差させて、対象の人に真似をしてもらう。

その他、右手の親指と左手の小指とを合わせたり、親指と人差し指で輪を作り、右手と左手の輪を知恵の輪のようにくっつける、などして相手に真似をしてもらいます。

アルツハイマー型認知症の場合、空間認知機能が低下しているため、相手の手の動きを見ながら真似をすることができません。

参考

  (認知症と生きる 認知症の医学的な特徴3[4章A] 診断の進め方)
  (認知症と生きる 認知症の医学的な特徴3[4章B] 神経学的診断)
  (認知症と生きる 認知症の医学的な特徴3[4章C] 機能テスト)
  (認知症と生きる 認知症の医学的な特徴3[4章D] 血管性認知症)
  (認知症と生きる 認知症の医学的な特徴3[4章E] レビー小体型認知症)

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