認知症と生きる 当事者から見る認知症・家族編2

放送大学・「認知症と生きる」第14章

  当事者から見る認知症 家族編2
  認知症と生きる 当事者から見る認知症[14章B] 家族編2

講義内容の整理

認知症の人を抱える家族から見て認知症はどのように感じるのか、

ここでは若年認知症のご本人で

  「僕が前を向いて歩く理由」

を書いた著者の中村成信さんの奥さんの方に、講師の先生が伺った時のお話しを通して認知症に関しての理解を勉強します。

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夫が逮捕されてしまう

「僕が前を向いて歩く理由(わけ)」の著者の中村さんは、公務員として働いていた56歳の時に、自分では覚えのない「万引き」を疑われて逮捕され、その経験から自分が認知症だと知りました。

以下は奥様の話から。

 ・逮捕されたと聞いて

逮捕されたと聞いたときは、なんて大変なことをしてくれたんだ、と思いました。

その後もテレビや新聞で報道されてしまったので、毎日が怖かったです。

ところが、釈放された時は嬉しそうに帰ってきて、留置場にいた時の様子を聞いても何かいつもと違うので、もしかしたら病気なのかもしれないと感じました。

初めはうつ病を疑いました。

 ・捕まるという出来事以前には何か

そういえば、家の中に同じものがあふれていました。

リフォームしたばかりで、家の中はすっきりしているはずなのに、家の中に荷物がいっぱいになりました。

たとえばトイレットペーパーなどは納戸やクローゼットにいっぱいに入っていました。

私がこれ以上買ってこないよう言うと、今度は買って帰ってきたものを外のバイクの上に置いたままで家の中に入ってきたりするようになりました。

また、普段はあまり怒る人ではなかったのですが、ちょっとしたことに、それも何でもないようなことで、私もビックリするほどの怒り方をしたことが、何度かありました。

 ・いちばんつらかった体験や経験は

病気だと告知された時以上に、事件を起こした後の懲戒免職でした。

ほんとにつらかったです。

30年以上も働いてきたのに、最後が懲戒免職という結果になったことが悲しかったです。

収入がゼロになってしまったので、どうやって生活するかということばかり考えていました。

 ・認知症と診断を受けてから
  周囲の人や友達の反応は

しばらくはみんなに出会わないようにしました。

朝早いうちに車ででかけ、長女の家の近くの公園で過ごしたり…

 ・それは「出会いたくない」という…

はい、皆さんにどういう顔で会ったらいいのか分かりませんでした。また皆さんも心配しているだろう、という気持ちもありました。

1か月ぐらいはこんな感じで、後は家の中に閉じこもったままでした。

 ・周囲の人と解け始めるきっかけは

娘が「働く」ということで、仕事を探しに外に出始めました。

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それで家の中に閉じこもっていてもいけないと思い、近所の人や近くの親戚に全部話しました。その時はもう「認知症」という診断は受けていました。

そして、

  外で夫を見かけたら
  声を掛けて欲しい

とお願いしました。

 ・一見すると普通の人と同じですが
  そのために家族が対応したことは

夫は週に2回ほど介護施設に有償ボランティアで通っていますが、その近くに100円ショップや事件を起こしたスーパーもあり、それが心配だったので、

  夫の診断書と写真と
  夫が載った新聞の記事

を持って、スーパーや100円ショップに行きました。

  この人が来て、万が一
  物を盗っていたら、警察ではなく、
  家族や家族会あるいは施設の人に
  連絡して欲しい

とお願いをしました。

 ・認知症と生きる人について
  周りの人に知ってもらいたいことは

夫は「前頭側頭葉型認知症」なので、見ただけでは認知症とは分かりません。

「元気だね、病気だと分からない」と言われると、とてもショックで悲しくなってしまいます。

説明しないと理解してもらえない病気なのに、だからと言って本人の行動を説明するわけにもいかず、この点はとても悩んでいます。

これは「元気に前向きに」と頑張っている本人(夫)にも言えません。

★以下は講師の先生の解説です。

現在中村さんは認知症と分かって、懲戒免職は解けています。

ここで紹介のあった以外のオフレコの話でも、きれいごとでは済まされない、さまざまな思いを家族は抱いていました。

口にしたくても出せない葛藤もたくさんあったようでした。

この講義を受講して

認知症は脳の病気で、代表的なアルツハイマー病などは見かけだけでは病気とは分かりません。

若年認知症の人などでは、特にその傾向が強いのだろうと思います。

むしろ身体が健康なだけに、周囲の人からの病気への理解が進まず、かえって困った事態も起きるのかもしれません。

「万引きをしておいて、病気だなんて嘘だ」などと後ろ指を指す人も、もしかしたらいるかもしれません。

認知症という病気の理解が社会全体で進む必要があるのだと思います。

参考

  (認知症と生きる 当事者から見る認知症[14章A] 家族編1)
  (認知症と生きる 当事者から見る認知症[14章B] 家族編2)
  (認知症と生きる 当事者から見る認知症[14章C] 家族編3)
  (認知症と生きる 当事者から見る認知症[14章D] 家族編4)
  (認知症と生きる 当事者から見る認知症[14章E] 家族編5)

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