放送大学・「認知症と生きる」第14章
当事者から見る認知症 家族編3
認知症と生きる 当事者から見る認知症[14章C] 家族編3
講義内容の整理
ここでは認知症の人の家族に焦点を当てています。
家族として認知症の人を支えることはとても大変なことです。そんな家族を支援することも大切なことと言えるでしょう。
そうした認知症の人の家族への支援にはどんなものがあるでしょうか。
認知症の人の家族に質問をしたら、
「家族会に助けられた」
という声が聞かれました。
家族会は認知症の人を支える家族に向けた支援として、とても重要なものだと言えそうです。
ここでのテーマは、家族会と家族会の活動の様子の紹介です。
認知症の人を支える家族の会
第1回で登場して下さった中島紀惠子先生のインタビューでも、先生が千葉で家族の会を立ち上げた時、「たくさんの家族がそれを切望していた」との話がありました。
その家族会の活動の様子として、家族会の支部のひとつの
「北海道
認知症の人を支える家族の会」
の事務局長の方にインタビューした時の話がありました。
・「認知症の家族の会」というのは
どういうふうに設立したのでしょうか
本部は京都で、1980年代にできていたようですが、それよりはちょっと遅いです。
1983年に北海道社会福祉協議会で、敷島さんという全国の家族会の方が講演で「ぼけ老人にも人間らしい暮らしを」という話をしてくれました。
それに賛同した人々が北海道にもこういう家族会があるといいね、ということで1987年に「認知症の人を支える家族の会」が設立されました。
・会の目的は
認知症への理解は一般にはまだまだだったので、認知症を正しく理解してもらおうということと、家族や本人たちに支援ができれば、ということで家族会ができました。
・家族にとって
家族会はどういう存在ですか
私(事務局長)が介護をしていたころは情報が全くない時代なので、家族会があるという所に行きました。
そこでは溜まった思いを聞いてもらい、泣いてしまいました。
そして、例えば失禁の話に
「出るからいいんだよね」
と言われて、考え方が大きく変わりました。
そして、しゅうとを介護していた私に、おじいちゃんが
「洗濯機があるから
いくらおしっこをしても
大丈夫だよ」
と言ってあげなさい
とアドバイスをもらったのですが、そしたらすごく嬉しそうな顔をしてくれました。本当に助けられています。
それと、普通のサークルと違って、みんな本音で話す分、心が本当に通じるところがありました。
家族会の活動・集い
次は、家族会の方々の集まりの「集い」の様子です。
・最近のことを話してください、〇〇さん
★母が3月に風邪をひきました。私からうつしてしまい、入院になってしまいました。
食事がとれない、足が立たないということで、1か月入院しました。
前に勧められた施設に今日も行ってもらいました。施設でもやっぱり徘徊して、1時間半ぐらい職員さんと歩くようです。
昔マラソンをやっていたので、歩けば自分の体が調子がいいということで歩きたがります。
・△△さんのところは
★こちらの会には本当にお世話になりましたが、去年の11月に亡くなりました。
風邪をこじらせて肺炎になり、4、5日の間にあっという間に亡くなってしまいました。
もうダメですと言われた時に、一度でいいから家に連れて帰ってあげればよかったと思っています。
★今年の4月に私もしゅうとめをみとりました。
最後は、いつ食事や水分を止めるかは、施設よりも家族の方が変化がよく分かっているので、最後は家族が決めました。
止めると決めた時は私もかなりつらかったですが、子どもたちも一晩みとったので、それなりに良かったかなとも思っています。
★みとられたとき、お薬や水分をいつ止めるかというのは、私が今そうなんです。
今は薬を少しずつ減らしてますが、命を止めることを家族が判断するというのは、・・・
★「延命はいらない」とは言っても、「命が…」という時の判断で、後で後悔が残っても困る。難しいですね。
★自分が「止めてください」と言うと、一週間以内には亡くなるということを知り、その上での判断なのできつい。
★(全員)そうですね
★でも、もう口に入れても飲みこめない状態で、「寿命だ」と考えるしかありませんでした。
★こういう家族会って、先の話も皆さん出してくれるので、やっぱりインターネットやいっぱいある情報以上に、こんなふうに顔を合わせながらの「生の声」というのはいいですね。
以下は講師の先生の解説です。
こんな風に生の声を聞くと、周りから見ているだけでは分からない、さまざまな思いや葛藤の中で日々を生きていることを伺い知ることができます。
こうした家族会が家族の支えとなっていることがわかります。
この講義を受講して
人は苦しい時やつらい時にも、誰かに話を聞いてもらう、そして理解してもらえるということが大きな力になるんですね。
そのためには、自分と同じ境遇の人があつまり、心が通じあえるということでは家族会というのがとても大きな支えになるということが分かります。
そして、これは認知症ということに限ったことではなく、いろんなことで言えるのだろうと感じます。
障害者の兄弟を持つ人の会などでも同じことなのだろうと思います。
そして、同じ悩みを持つ人が集まることで、発生する種々の問題にもいろんな解決策を知っている人たちがいる、ということもとても心強いことに思えます。
参考
(認知症と生きる 当事者から見る認知症[14章A] 家族編1)
(認知症と生きる 当事者から見る認知症[14章B] 家族編2)
(認知症と生きる 当事者から見る認知症[14章C] 家族編3)
(認知症と生きる 当事者から見る認知症[14章D] 家族編4)
(認知症と生きる 当事者から見る認知症[14章E] 家族編5)