認知症と生きる 認知症の人に共通の特徴、見当識障害

放送大学・「認知症と生きる」第6章

  認知症の人の行動と心理的特徴の理解①
認知症と生きる 認知症の人に共通の特徴[6章B] 見当識障害

講義内容の整理

認知症の人に共通してみられる症状(中核症状)と、介護のための基本的考え方を、ここでは見当識障害について見ていきます。

見当識障害とは大きく言って、時間、場所、人について見当をつけることが難しくなることです。

健康な人ならはっきりとは分からなくても、おおよそいま何時ごろかは分かります。そしてここがどこかも分かります。

知らないと思っている人から挨拶されたりして、その時は思い出せなくても後で誰だったかを思い出したりします。
これはある程度、その人に対しての見当がついているからです。

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時間の見当識障害とその対応

  対応のポイント

 ★日付や時間の分かりやすいものを用意する

  見やすいところに時計を置く
  カレンダーを日めくりにする
   あるいは、過ぎた日に×をつける

健康な人であれば、今日は何曜日かとか何月何日か、あるいは今おおよそ何時かということが分かりますが、

認知症の人の場合は、比較的早い段階から時間の見当をつけることが難しくなってしまいます。

たとえば天気の悪い日などに、午前中なのに夕方だと思って夕飯の準備をしようとしたり、あるいは夜なのに会社に行こうとしたり、などの行動が出たりします。

こんな場合、時間が分かりやすくなるような工夫が必要となります。

たとえば、見やすいところに大きな時計を置くというのは役立つでしょうし、カレンダーでは終わった日には×をつけるなどすれば分かりやすくなります。

あと言葉かけなどでは、

  3時だからおやつにしましょう

などのように、時間を言うのも効果があります。

場所の見当識障害とその対応

  対応のポイント

 ★外出はできるだけ一緒にいってあげる
  家の中では、目印をつけてあげる

場所の見当識障害への対応は比較的難しい問題となります。

健康な人の場合は、初めての土地で道に迷うことはあっても、長年住み慣れた土地で道に迷うということはめったにありません。

ところが認知症になると、長年住み慣れたはずの場所で道に迷うということが起きます。

その結果、外出したまま家に帰ってこなくて保護されたり、あるいは事故に遭いかねないような危険な目に遭うこともあります。

なので、外出の場合はできるだけ一緒について行ってあげるのが望ましいでしょう。

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また見当識障害では、自分の家の中でもトイレの場所が分からなくなったり、電気のスイッチがどこにあるか分からなくなったり、ということも含まれます。

そのため、例えば「トイレ」と書かれた看板を掛けることで解決することもあります。しかし認知症の段階によってはこの文字を認識できなくなる場合があります。

そして、大きな目印ならば分かる場合もありますが、これでも解決しない場合もあります。

あるいは、トイレの電気をつけてドアを開けておき、周囲をやや暗くして目立つようにするなどの工夫も役立つかもしれません。

ただし、認知症の段階やそれぞれの人の状況に応じて、どんな方法が最もよいのかは、いろいろ試してみる必要があります。

これで大丈夫という方法は、なかなか見つかりません。

人の見当識障害とその対応

  対応のポイント

 ★介護者の方まで混乱してしまわないで
  落ち着いて事実を伝える

  「私はあなたの娘ですよ」

人についての見当識障害は、ある程度病気が進行した段階で出現します。

健康な人ならば、知らない人から挨拶をされた時、その場では思いだせなくても、後になって思いだすことがあります。

これはその人に対してある程度の見当がついているからですね。

でも認知症が進むと、知っているのに知らない人だと思ったり、知らない人なのに知っていると勘違いしたりします。どちらかといえば、知っているのに知らない人だと思ってしまうことの方が多いようです。

見当識障害で家族が分からなくなってしまうということは、家族にとってはショックですが、このとき家族まで一緒になって混乱してしまわないよう気をつけましょう。

本人がいちばん混乱して不安に思っています。家族や介護する人が混乱した話し方をすると、本人がますます不安に感じてしまいます。

  「何を言っているの?
   私はあなたの子供でしょう」

などと驚いたような言い方はしないで、

  「私はあなたの子供です」

と穏やかに話すように努めることが大事です。

また、

  「私が誰だか、わかる?」

などのように、認知症の人を試すような言い方は認知症の人のプライドを傷つけ、不安を増長させることにもなるので、よくない言い方です。

参考

  (認知症と生きる 老化と認知症との違い[6章])
  (認知症と生きる 認知症の人に共通の特徴[6章A] 記憶、判断)
  (認知症と生きる 認知症の人に共通の特徴[6章B] 見当識障害)
  (認知症と生きる 認知症の人に共通の特徴[6章C] 失認、失行)
  (認知症と生きる 認知症の人に見られる症状[6章D] 問題行動など)

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