心を動かす・ユーティライゼーション

  人の心を動かす

というのはとっても難しいですよね。

きっと誰もが感じていることだろうと思います。

でも、世の中には「心を動かす」ということを得意にする人もいることは事実ですね。

私が知った範囲に限ると、石井裕之さんという方です。

その石井さんが「心を動かす」ということのための道具として、

  ユーティライゼーション

ということを話してくれたことがありました。

「ユーティライゼーション」は「利用する」ということで、普通なら”問題だ”と思われることを、逆に利用してしまおうということです。

そんな話の一端を思い出してみました。

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問題を利用してしまおう

お話をしてくれた石井裕之さんという方は、セラピストで催眠療法を得意としていました。

そんな石井さんがセラピストとして向き合った相手の人を催眠誘導するとき、こんなことをしたそうです。

たとえば催眠誘導しようと相手の人に話しかけた時、どこからか話し声が聞こえてしまい、気になっている様子です。

そんな時、それまでの催眠誘導だったら

  「私の声にだけ注意を向けてください」

というところを、石井さんの場合は雑音のはずの誰かの話声を利用してしまうんだそうです。

  どこかで
  人の話し声がきこえますね

  いったい
  どんな人なんでしょう

  若い女性でしょうか
  どんな顔で、
  どんなカバンを持っているんでしょう?

という感じで、相手の人と一緒にその雑音の世界に入ってしまうとのことでした。

この感覚は、認知症介護のプロフェッショナル大谷るみ子さんの方法(介護はファンタジー)

  相手の世界におじゃまする

という感覚に似たものを感じます。

あるいは催眠誘導中にどうも時計の音が聞こえて気になるようだと感じると、

  時計の音も聞こえますね
  カタッカタッ!

という感じで、相手の人と一緒の感覚の世界に入って行くということでした。

この感覚は私も経験があります。

私が放送大学のサウンドスケープという科目でのフィールドワークで六義園に行ったとき、

木の葉と笹の葉が風に吹かれて

  ザッザッ サラサラッ

という音がした時、

それまで聞こえていたはずの、ヘリコプターの音やら外部の自動車の音が全く聞こえていなくて、木の葉と笹の葉の擦れる音だけが聞こえていたということに気づきました。

人の抵抗心を利用してしまおう

石井裕之さんが得意としていた催眠誘導にも、やはり相手の人の協力が大事とのことでした。

石井さんのもとには、よく夫婦でカウンセリングに訪れる人達が多かったようで、

さらにその時の夫婦の様子を見ると、多かった場面として

  夫:何とか妻の精神的不安定を
    直して欲しい、という思い
  妻:ムッとしたまま

というようなことがあったとのことでした。

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どうしてそうなったのかと言えば、これまた多くの場合は夫の浮気疑惑が原因で妻が精神的に不安定になってしまった、ということです。

妻の立場からすれば、

  夫が悪いのに、
  どうして私が治療を受けるの?

という強い不満を持ちながらの来訪という状況でした。

そんな時、妻のその不満を巧みに利用した石井さんのやり方というのが、

  「奥さんの前に、
   旦那さんの方が先に
   催眠に入って頂きます」

と言って、驚く夫の方を所定のイスに座らせて、妻の見ている前で催眠誘導します。

もちろん心の準備が全くなかった夫は、なかなかうまく催眠に入ってくれません。

  う~ん!
  どうもうまくいきませんね
  ちょっと緊張気味なんでしょうか?

などと言って、ちょっと旦那さんの方をイジっていると、見ている妻の方が

  「あなたダメね
   緊張しすぎでしょ」

などと大喜びになるそうです。

そしてその後、いよいよ妻を催眠誘導しようとする頃には

  妻は素直に催眠に
   誘導されてくれる

ということでした。人の反抗する心を利用する、さすがです。

もうひとつ、さすがと思わせてくれた話は、「ダブルバインド」と呼んでいました。

本来の意味だけではなく「陰の意味」を利用するということです。

講演でのお話しの冒頭で、前にいる人たちに質問をします。

  「とっても面白いけど
   あまり役に立たない話と

   あまり面白くはないけど
   とっても役に立つ話の

   どっちがいいですか?」

こんな質問をするのもどうかとは思いますが、これが意味するものはなんでしょうか?

時間のある方はちょっと考えてみると面白いかと思います。

お話しする石井さんは、「これは大事な話だから、みんなに真剣に聞いて欲しい」と思って話す内容です。

一応質問はしても、聞く人たちがどちらを選んだとしても、この後話す内容は、実は同じなのですが…

  冒頭の質問の意味するところは

もし石井さんが冒頭で

  これから話す話はとても大事で
  役に立つ話なんです

と言って話し始めた時、聞く人の心の中では

  役に立つ話だなんて、
  本当かよ!

などという反発の気持ちが沸き起こってきてしまいます。

ところが、ダブルバインドの質問をされてそれに答えてしまうと、

   あまり面白くはないけど
   とっても役に立つ話

というものを、自分の意志で選択したことになってしまいます。

自分の意見に自分で反発できる人というのはなかなかいません。

素直に、

  このお話は
  とっても役立つお話しだ

と思って真剣に聞く結果となってしまいます。

これまた、さすがです。

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