子供が発達する過程は、囲碁の定石を身につけることに似ているところがありますね。
放送大学・授業科目での
「教育心理学概論’14」
での面白い実験から見たいと思います。
なんですが、
その前に、囲碁の定石について、こんな言葉がありますね。
「定石を覚えて二目弱くなり」
強くなるために囲碁を勉強して、定石を覚えたら、
あれ~?
かえって弱くなっちゃった!
なんていう話です。
これに似たような話が、教育心理学概論の中にも出てきました。
定石を覚えて二目弱くなり
定石というのは、昔から伝えられてきた正しい手の打ち方のことです。
多くの囲碁の達人達が、
こんな時には
こう打つのが最善だよ!
と教えてくれている、手の打ち合いのことです。
最善という以上、こう打つのがいちばん強いはずなんですが、ところが普通は、
この定石を覚えて使おうとすると、逆にいままでより弱くなっちゃう、
という現象がおきるんですね。
このことを
「定石を覚えて二目弱くなり」
なんて言ったりするんですね。
これ、どうしてかというと、定石というのが、
自分がいい手を打った時、相手も最善の手で返してくる、ということを想定しているので、
相手が悪い手できちゃったときに、どうすればいいのか分からなくなってしまう、
ということなんですね。
相手はもともと悪い手に慣れているので、こちらが慣れていない分、
かえって不利になっちゃうということで、結局弱くなったように見えるんですね。
そう言えば先日、囲碁界で「世界最強の棋士」と呼ばれるイ・セドル九段が、
人工知能のアルファ碁と対戦しました。その時のことです。
最初は
「人工知能が私に挑戦するなんて
10年早いとおもいますよ」
なんて、イ・セドル九段が言っていたんですが、いざ5番勝負をやってみたら、
結果は人工知能のアルファ碁が4勝1敗で圧勝でした。
では、イ・セドル九段が勝った第4戦目はどうだったの? というと、
その78手目に、イ・セドル九段が、
敵の黒の間に
あえて斬り込むという
奇策
を放ったんですね。
これに人工知能が動揺してしまったようでした。
つまり、人工知能にとって、自分が最善の手を打ったんだから、
相手も最善の手を
打ち返すはず
という目論見があったんでしょうが、見事にこの目論見が外れてしまい、
以後、暴走してしまいました。
でも悪手というのは、その時はたまたまいい結果になったとしても、
いずれは定石の手にはかなわなくなるでしょう。
積み木でバランスを取ってみよう
これを連想させる実験が、「教育心理学概論’14」の中にあったんですね。
「小さい子どもの自然な学び」
という中で、
子供たちにいろんな積み木を与えて、課題を出すんですね。
細い金属製のレールが
埋め込まれている
「平均台」の上に
積み木をバランスを
保って置くこと
こんな課題を出しました。
積み木には、直方体で標準的なものだけじゃなくて、
左右の大きさが違ったり、いくらやってもバランスがとれないものだったりの他、
ちょっと意地悪をして、見た目は標準的な直方体なのに、実際は
その片方の中に「おもり」が見えないように入っている、なんていうのがありました。
実験のメインは、最後の見かけが左右同じ重さなのに、実際は見えないところの
片方にだけおもりが入っている積み木のバランスを取る事ができるか?
ということでした。
これを、4~5歳、6~7歳、8~9歳の子供たちのグループに分けて、
やってもらったんですが・・・
さぁ!
どうだったでしょうか?
ここで、ちょっと考えてみてください。
で、結論を言うと、
4~5歳と、8~9歳 ができた。
6~7歳 ができなかった
という傾向がありました。
これ!
どうしてだったんでしょうか?
その後、よく聞いてみると、
4~5歳の子供たち、
とにかく、あ~だこ~だと
試行錯誤した!
8~9歳の子供たち
左右の重さが違うことを知り
バランスの位置を調整した
そして、できなかった6~7歳の子供たちは
6~7歳の子供たち
モノはその中心で
バランスがとれるはず!
ということで、
ひたすら、
中央の位置で
バランスをとろうとした!
そしてついに、
諦めた!
この6~7歳の子供たちは、モノはその中心でバランスがとれるもの、
ということを学習してしまったばっかりに、4~5歳のころにはできていた
ことが、できなくなってしまったんでね。
まさに、
「定石を覚えて二目弱くなり」
そのもののようですね。
でも、そこは人間です。弱くなったままじゃ終わりません。
8~9歳へと、もっともっと学習して、かしこくなって行きます。