自閉症スペクトラム障害の原因を想像、乳幼児心理学より

自閉症の原因に思う

最近、自閉症スペクトラムという言葉がよく聞かれるようになっています。

そしてよく聞くと、この自閉症スペクトラム障害というのは、別に知能が劣っているわけではなく、

とても知能の高い人でも自閉症スペクトラム障害を抱えている人もいるようです。

この自閉症スペクトラム障害の人の特徴としては、

  ・あいまいなコミュニケーションが苦手
  ・アイコンタクトや顔の表情を読み取るのは苦手
  ・場の空気を読むことに困難さがある
  ・相手が何をどう考えているのかを想像することに
   困難さがある

などが言われています。

ハッキリした本当の原因というのはまだ分からないようですが、放送大学の「乳幼児心理学」の知見をもとに、私なりに考えてみました。

あくまでこれは、個人的に想像した結果ということなので、誤解のないようお願いします。

同時に、自閉症の原因はこれひとつだけ、などと言うつもりもありません。

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自閉症スペクトラムのメカニズムの推測

考えるきっかけとなったのは、放送大学での授業

  乳幼児心理学’16

の第1回の放送授業の中で、乳児期の視力と高機能自閉症児との関係に関する説明があり、

  乳児期の視力がいいと、

   自閉症になりやすい

という話でした。

  何故、乳児期の視力がいいと

   自閉症になりやすいの?

これがここでのテーマです。これが少しでも何かの役に立てれば、と思います。

この原因として思ったのは、通常の赤ちゃんの場合で考えて

  通常は、誕生直後で、

  寝返りも動くこともできなくて

  視力が悪い赤ちゃんが目にするもの、

  それは

    人の顔

  しかないはず。

視力がとても悪いので、目の前にあるものしか見えない赤ちゃん、寝返りもうてません。

そんな赤ちゃんの目の前に現れるものといえば、

  人の顔

しかないでしょう!

最初は自分を取り上げてくれた女性、そして次に自分のお母さんの顔です。

この世に生まれて初めて目にするもののインパクトは極めて大きいと思います。

そして次に、人の顔の中で動く部分と言ったら

   目 と 口

ですよね。

動くものに注意を引かれるのは、動物一般の本能です。

そうすると、赤ちゃんの世界では、「トップヘビー」と呼ばれるこんな形は、極めて大事な形ということになりますよね。

その結果、「顔」と「目」は、この世の中で特別に大事なものになるはず。

ほんの一瞬でも人の顔が見えると、それも感情が表情に出ている顔が見えると、

脳が瞬間的に処理をしてしまい、後になって「見覚えがある!」という状態になるようです。

こうして育った結果、人の顔と目と表情には、脳がとても敏感に反応するようになり、いわゆる

  人の気持ちが分かる

  空気が読める

状態になるんだと思います。

でも、もしこれが、赤ちゃん時代の視力が良かったら、どうなってしまうんでしょうか?

写真の左側は大人にとって見える顔、右側が生後3か月の乳児から見える顔です。
(放送大学の資料を基に、ほぼ同様になるように作成しました)

もしベビーベッドに中の赤ちゃんにとって、天井やぶら下がっているオモチャなんかがよく見えてしまったら、人の顔はもう特別なものじゃなくなっちゃいますよね。

つまり、

  人の顔は、

   単なる風景のひとつ

に過ぎなくなっちゃいます。

そうすると、人の顔への興味やこだわりがほとんどなくなってしまい、人の感情や気持ちを理解するための機会がなくなってしまいます。

私には、これが自閉症スペクトラムの原因のような気がします。

自閉症の人は、よく周囲の人から

  人と話すとき

   どうして目をみないの?

と言われるそうですが、これは一般の人にとっては、

  人と話すとき

   どうして喉をみないの?

みたいに言われているようなもので、

  「ヘッ?」

としか思えないんだと思います。目を見る理由がないんですよね。

それともう一つのことで、「体感覚」です。

私は以前聞いたことで、

  目の見えない人は

   その分、他の感覚が

   とても優れてくる

というものがありました。

ということは、普通の赤ちゃんは、新生児のころの視力がとても悪い時期に、

実は見えないところで、

  体の感覚が

   とても発達している

ような気がします。

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でも、赤ちゃんのころの視力が良すぎると、この「体感覚」の発達の機会さえ奪われてしまい、自分の体が思うように動かせないという事態の原因にもなりかねないのかもしれません。

放送大学での自閉症スペクトラムの紹介

私がこの自閉症スペクトラムというものをもっと知ろうとしたきっかけになったのは、

放送大学での「乳幼児心理学’16」放送授業の、ほぼ冒頭での紹介だったのですが、

  乳児の視力はとても悪いのですが、
  この視力が悪いことに、認知発達上の意味がある。

  乳児は生まれた時から、
  人の顔を好んで見ようとする傾向がある。

そして、

  高機能自閉症児を調べた結果、
  6ヵ月、10ヵ月時の視力が、
  定型発達児と比べて非常によい
   ということが分かりました。

とのことでした。

ここでの「乳児は生まれた時から、人の顔を好んで見ようとする傾向がある」というのは、

私もおおいに感じるところで、電車の中で子供と目があったこともありました。

  「子供と目があって」

でも、普通の場合は相手の目に注意を払いながら会話をすることになるんでしょうが、

その場合なら、相手の人が怒ったり喜んだりする様子が、ほぼリアルタイムで分かると思います。

怖くて相手の目を見られないというのは、それはそれで相手の目にしっかりと注意を払っている、という意味でもありますよね。

でも、相手の人の目や表情に全く関心が持てないとしたら、たとえば相手の人が怒ったとしても、本当に怒ってから、言葉や行動に移すまでにはずいぶん時間差があるはずです。

この時間差のおかげで、相手の人がどうして怒るのかがまったく分からなくなるんでしょうね。

小説、

  「人間失格」

に登場する主人公の

大庭葉蔵

の葉ちゃんは、とても頭がいいのに、自閉症スペクトラム障害のために、他の人が考えていることがまったく分からないように思えました。
葉ちゃんは、女性の気持ちを考える時のことを、

 「蚯蚓(みみず)の思いをさぐるよりも、
   ややこしく、わずらわしく、」

という表現をしていました。そして、

 「自分は隣人と、
   ほとんど会話ができません。
  何を、どう言ったらいいのか、
   わからないのです」

とも言っていましたね。

また、重度の自閉症の作家で、

  「自閉症の僕が飛び跳ねる理由」

という本を書いた、東田直樹さんによると、自分で自分をコントロールするのが難しくて、勝手に言葉が出てしまうとのことでした。

  これまでに、奇声をあげて、
  何度恥ずかしい思いをしたことでしょう。

  僕も静かにしたいのです。

  けれども、僕たちは口を閉じるとか、
  静かにするとか言われても、

  そのやり方が分からないのです。

ということを言っていました。

そして、「自閉症の君との日々」という番組での、ミッチェルさんという方から質問された、

 「自分の自閉症のお子さんに
  父親として何をしてあげればいいかと
  僕に質問されました」」

という質問に、ちょっと感動的な言葉が…

 「僕はそのままで十分だと
  お答えしました

  子供が望んでいるのは
  親の笑顔だからです」

そして、

 「僕のために
  誰も犠牲になっていないと

  子ども時代の僕に
  思わせてくれたのが

  僕の家族のすごいところです」

テレビで観た私の感想では、あのお母さんが天才に思えました。

解決のためには何が大事なんでしょうか?

正直なところ、私には分かりません。

ただ、人の顔を見た時、普通は脳の中の

  紡錘状回(ぼうすいじょうかい)

と呼ばれるところが活性化します。

この領域は通常は人の顔を見た時に活性化するんですが、たとえばその道の専門家に、鳥や自動車の写真などを見せても活性化するという実験結果もあります。

さらには、この紡錘状回は、線で描いた顔の絵やニコちゃんマークなんかの、本当の顔ではないものを見た時でも活性化します。

なので、この紡錘状回は、非常に興味のあるものを見た時に活性化するところなんでしょうね。

そして自閉症児の場合ですが、自閉症児が人の顔を見た場合は紡錘状回はあまり活性化しません。

でもこの紡錘状回は、先天的なものというより、日々の中で後天的に形成されていくものともいえるようで、だから鳥の専門家が鳥を見た時なんかにも活性化するんでしょうね。

ということは、何らかの方法で、人の顔を見た時に紡錘状回が活性化する、つまり人の顔や表情に強い興味を持つことができたら、かなり大きな改善につながりそうに思います。

ネットだったかテレビだったか忘れましたが、ある保育士さんが、自閉症とされ、眼を合わせてくれない子を指導していた時、いろいろやった中のひとつに、

  保育士さんが自分の顔を

  おもちゃのように振ってあげた

なんていうことがありました。顔が動くので、子供が面白がって顔を見ていたのですが、これで少しずつ顔に興味を持ち、最終的には自閉症の状況がずいぶん改善したということがありました。

面白いヒントになりそうです。

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