犬と人との間の愛情により、すさんだ人間の心が癒され更生されるという、感動のドキュメンタリーがありました。
強盗や暴行・殺人などの罪を犯した受刑者たちが、「ドッグプログラム」と呼ばれる犬との交流のプログラムを通じて、次々の更生の道を辿るという話でした。
それは2010年3月にNHK・BSハイビジョンで放送された
「プリズンドッグ
~僕に生きる力をくれた犬~」
という番組でした。
この番組は次の紹介の文から始まっていました。
アメリカ・オレゴン州の刑務所に
犯罪者たちを更生させる
世界でも珍しいプログラムがある
それは「プリズンドッグ」と
呼ばれていた
2018年になっても強烈な印象はまだ薄れることはなく、いままた見直してもあの時の感動が再び蘇ります。
でも、犬とともに生活する人はたくさんいますが、誰もがこのプリズンドッグのように行くわけではありません。
何が通常の犬の飼い方と違うのか、プリズンドッグのキーポイントは何かを追ってみました。
プリズンドッグのあらすじ
全米で注目されたこのプログラムによって、受刑者たちは人間としての感情を取り戻します。
「自分を愛してくれる人がいるんだと
初めて気づかされた
犬が教えてくれたんだ」
「ここに来る前まで
僕には感情なんてなかった
自分の感情 他人の感情
犬への愛情 そして命
全てを学んだんだ」
この番組は、人から見放された犬と、社会からはみ出してしまった若者たちの、心に傷を持つもの同士が信じあう中で、共に生きる力を育んでいく物語でした。
番組は、ドッグプログラムに初めて参加した3人の受刑者たちの取材記録で、
親の愛情を受けないまま育ち、
ケンカに明け暮れていたジェフ
死んでしまった被害者への罪悪感から
全ての自信を失ったアレックス
我慢ができず、自分を押さえられないまま
犯罪を繰り返してきたスティーブン
犬を育てていく中で、過去の自分から立ち直ろうとする3人の若者たち、
彼らと犬の3ヶ月を追った物語でした。
育てる犬は、
人から虐待を受け、
捨てられ保護された犬
で、引き取り手がなければ処分されてしまう運命にあった犬たちです。
この中から何匹の犬が選ばれて、受刑者たちに引き渡されます。
プリズンドッグに参加した受刑者たちは一度に一匹の犬を訓練し、約3ヶ月かけた訓練が終了すると、希望する里親の元に引き取られて行きます。
ドッグプログラムに参加を希望した受刑者たちは、ここで「お座り」「伏せ」などの決められた訓練項目を訓練するのです。
何を訓練するかは、犬の様子を見ながら受刑者自らが決めます。
たとえば
・飼い主に呼ばれてちゃんと戻る
・伏せ
・大きな音で騒がない
・人ごみの中を落ち着いて歩く
など、これらのひとつひとつを3ヶ月かけて覚えさせて行きます。
写真は訓練とは異なります
訓練は1日2時間で、犬は通常は犬舎の中にいます。
この訓練の中で、受刑者たちは何度も何度も犬を褒めることになります。横に来た時、座った時、じっとしていた時、おとなしくした時、
Good Boy! Good Boy!
Good Girl! Good Girl!
何度も何度も褒めてあげます。
そのたびに犬の中にも人に対する忠誠心がどんどん育まれていくようでした。
どうしても「伏せ」ができなかったスティーブンの担当する犬ハンターが、7日目にとうとう伏せができたとき、スティーブンが本当に嬉しそうに
Good Boy! Good Boy!
と繰り返していました。スティーブンにとっては大きな達成感ですが、犬のハンターにとっても、スティーブンの喜びの声はきっと心に響いていたことでしょう。
こんなことをくり返して心が通じ合った人と犬ですが、いずれは犬が里親の元に引き取られて行きます。
番組の最後では引き取られた犬たちのその後の様子を撮影したビデオを、受刑者たちが見る場面でした。
その中では里親たちが、犬を訓練してくれた受刑者に感謝をする場面がありました。
いままで誰かに感謝された経験などなかったであろうジェフが、ビデオの中で里親の感謝の言葉を聞いてうっすらと涙ぐむ場面は、もらい泣きしそうなほどでした。
プリズンドッグのポイントを探る
このドッグプログラムのポイントはどこにあるのでしょうか。
普通に犬を飼う場合と何がどうちがうのでしょうか。そこを考えてみたいと思います。
このドッグプログラムが更生に役だった
最大のポイントは、
★犬の訓練プログラム
にあったのでしょう。
それも、
大きな愛情を込めて
たくさん褒めて
訓練する
プログラムでした。
犬を訓練するためのしっかりとしたプログラムがあり、はっきりした目的があったということですね。
それと忘れてはいけないのは、
自ら希望した受刑者が
このプログラムに
参加した
ということです。受刑者がやらされたわけではないのですね。
そして「訓練」の意味を考える時、犬にはどうしても人間の社会になじんでもらう必要があります。
そのためにはどうしても、
人が犬に指図をし
犬が人に従う
という必要があります。
この関係が成り立たないと、結局は人も犬も互いにストレスを抱えてしまい、うまくいかなくなるのでしょう。
人は常に「上に立ちたい」という欲求がありますが、犬は上下関係は理解しても「上に立ちたい」という欲求はないようです。
なので「自分は下だ」と理解すれば、素直に人の言うことを聞きます。
反対に「犬の方が上だ」と思われてしまうと、人の言うことを聞かない犬と、犬の言うことを聞かない人との間で、互いにストレスが増幅しかねないことになるので注意なんですね。
まとめ
プリズンドッグの成功の秘訣は
・犬を訓練するための
しっかりとした
プログラムの存在
・大きな愛情を注いだ
褒めることでの訓練
人と犬との共存のためには、犬にもしっかりとルールを覚えてもらう必要があったということなんでしょうね。
そしてここにははっきりとした
「プログラムの目的」
があったこと意味があったはずです。
もしかしたら「3ヶ月後には別れの時が来る」という事実も、犬と人との愛情をさらに深めることに一役買ったのかもしれません。